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山口多聞 敵機、機動部隊に来襲 [山口多聞]

 山口少将は、敵が日本軍を待ち構えていた以上、
こちらの攻撃隊がミッドウェーに到着したのであれば、
ミッドウェーから飛び立った攻撃隊が、機動部隊上空に
達すると見ていました。

 すると、左前方の駆逐艦が、真っ黒な煙を高々と
吹き上げました。黒煙は、敵機来襲を知らせる狼煙で
あり、機動部隊を隠す煙幕でもありました。黒煙の
上空に、小さな機影が見えました。

 「敵機来襲。対空戦闘」というラッパが、けたたましく
鳴り響きました。艦内は、がなりたてる声が響きました。
艦橋からも敵機の形が補足できました。雷撃機が9機、
遠くから迫ってきました。旋回した時に、星形のマークが
胴体にくっきりと浮かびました。

 第一種軍装を身につけた山口少将は、黒い戦闘帽を
とり、深くかぶり直し、顎紐を締めました。午前4時7分、
重爆撃機が、上空に来襲しました。高角砲と機銃による
対空射撃が始まりました。あたりに凄まじい射撃音が
唸りました。

 上空に無数の曳航弾が飛び交い、辺りには
硝煙のきな臭い匂いが漂いました。山口少将を
はじめ、ほぼ全員が綿の耳栓をしていましたが、
耳が壊れるのはないかと思えるほどの痛みが走り、
頭蓋骨が割れそうに感じました。

 しまいには、脳震盪が連続で襲ってくるように
頭の中が朦朧となり、めまいや吐き気がして
きました。しかし、爆撃機を撃退すると、雷撃機が
編隊で横一列となって、海面近くを降下して
きました。腹には魚雷を抱えていました。

 加来艦長が、「最大戦速。取り舵一杯」と、
はやる気持ちを制するように声を伸ばして、
命じました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 第二次攻撃の要あり [山口多聞]

 友永大尉は、全機に帰投を命じ、第二次
攻撃の要ありと打電するように命じました。
しかし、搭乗員から、「無線が故障しました。」
という連絡がありました。

 友永大尉と同乗していた橋本大尉が、
「どんなことがあっても直ぐに直せ。」と
電信員を怒鳴りつけました。すると、
電信員から、故障の原因は、敵機の
銃弾が命中したためだと返事が
ありました。

 橋本大尉は、電信員から受けた機銃弾を、
背中越しに受け取りました。手袋をはめて
いるのに、まだ熱さが残っていました。

 友永大尉は、「二番機に発信してもらう。」
という屈辱的な気持ちで告げました。

 風防が開かれ、電信員は隊長機から後方の
二番機に、小型黒板を向けました。二番機の
偵察機が、双眼鏡で伝達事項を確認し、
電信員が機動部隊に打電しました。

 電信員から、友永大尉の連絡を受けた
山口少将は、旗艦赤城の司令部が、どの
ような判断をとるのか気になりました。
この時の時刻は午前4時でした。

 山口少将は、「セイロン空爆の時と似て
いる。しかし、対空射撃はセイロンの比
ではない。」と冷静に状況分析して
いました。

 あれだけの優秀な攻撃隊が襲撃して、
壊滅的な打撃を与えられなかったのは
なぜかと考えました。

 答えは、基地の対空砲火が強化された
からだと、おのずと導き出せました。
アメリカ軍は、日本軍が来ることを知って
おり、待ち構えていたという結論を
出していました。

 このことは、ハワイにいる敵機動部隊にも
筒抜けになっていると考えられました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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