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山口多聞 火砲の洗礼 [山口多聞]

 友永大尉が、全機に対して攻撃を命じた瞬間、
島中が破裂したと思うほどの火焔が、下界で
あがりました。

 対空砲火と、機銃が一斉に火を噴きました。
砲弾が、中空で激しく炸裂し、曳航弾が無数の
火線となって、飛んできました。

 攻撃隊には、二つの島が戦艦になったように
感じました。爆風にあおられ、艦上攻撃機が
大きく揺れました。エア・ポケットに入ったように
一気に数十mも落下する機体もありました。

 飛龍の飛行兵曹長が直撃弾を食らって
火達磨になり、赤黒い炎を吐いて、海上に
落ちていきました。第二中隊長も被弾し、
海面へ不時着する羽目になりました。
予想を上回る火砲の洗礼でした。

 友永大尉は、「こんなはずでは・・・」と考え
あせりました。他の搭乗員も同様でした。それでも、
搭乗員は熾烈な対空砲火の間隙を縫って、島に
殺到しました。

 30分にわたり、艦上攻撃機が爆撃を敢行し
空爆を加えました。エメラルド色の珊瑚礁に
浮かんでいたミッドウェーは火焔ともうもうたる
黒煙に包まれました。石油タンクが、大爆発し、
巨大な火柱を上げました。

 大きく旋回した友永大尉は、黒煙を透かして、
基地を見下ろしました。発電所や格納庫などから
紅蓮の炎があがりました。滑走路にもいくつか穴が
開いていましたが、まだ使用できそうでした。

 激しい対空砲火のせいで、思ったより命中率が
悪く、上陸作戦はできないと判断しました。友永
大尉は、いつの間にあんな堅牢な基地を作り
上げたのだと、苛立ちました。

 この状態では、サイパンから向かってくる、
攻略部隊に大きな被害が出ると判断しました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 バッファロー [山口多聞]

 日本軍は、迎撃に来た戦闘機は、グラマン
F4Fワイルドキャットだと思っていました。しかし、
グラマンは7機で、残りは、ブルースターF2A
バッファローでした。

 バッファローは、アメリカ海軍最初の単葉
戦闘機で、機体の形はヘルキャットに似て
いました。外観的な差は、バッファローは、
翼の両端に丸みがあるのに対し、ヘルキャットは
角張っているというものでした。

 しかしながら、戦闘力には大きな差が
ありました。護衛のない攻撃隊に対して、
旋回しながら突っ込んで、一斉射撃して
きました。

 友永直率中隊の艦上攻撃機2機が、
まともに銃弾を浴びて火を噴いて墜落
していきました。

 友永大尉の機体も数箇所に被弾し、
そのうちの一発は、燃料タンクに命中
したらしく、漏れた燃料が後方に
長い尾を引いていました。

 友永大尉は、同乗者にやられたタンクは
左右のどちらか確認し、被弾したタンクのみを、
空になるまで使い切りました。

 友永大尉は、「敵機と交戦中」と打電させ、
後方にいる零戦隊に伝えました。まもなく、
零戦隊が到着し、空中戦となりました。

 零戦隊は、歴戦の搭乗員を擁しており、
実戦経験がほとんどないパイロットで
構成されたバッファローやグラマンを、
15分ほどで17機撃墜していました。
残った10機は、戦場を離脱して
いきました。

 空母から発艦して約2時間、攻撃隊は、
宝石のように美しい珊瑚礁に浮かぶ
ミッドウェーの上空にさしかかりました。
飛行場は、敵機の姿がなく、全て
飛び立った後でした。

 友永大尉は、日本軍の動きを読まれていた
ことを知りましたが、全機に対し攻撃を命じました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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