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山口多聞 雷撃成功 [山口多聞]

 橋本大尉の中隊は、有利な位置について
いましたが、空母の回避運動のため、魚雷
発射地点が後方になり、このままでは、
命中精度が低くなると懸念されました。

 橋本大尉は、前方に断雲があるのを見つけ、
操縦士に、「雲の中で、左垂直旋回しろ。」と
命じました。操縦士の高橋一飛曹は、巧みな
操縦で雲に入り、雲から出た時、90度変針して
急降下し、空母の左舷500mまで肉薄しました。

 これだけ近ければ、回避行動は問題に
なりませんでした。海面から5mの高度を
飛行し、タイミングを見計らって、魚雷を
投下しました。発射と同時に軽くなった
機体がふわっと、浮き上がりました。

 航空魚雷は、海面にメスのように突き
刺さって潜り込み、時速93kmで疾走
しました。目の前には、空母の機銃座が
迫りました。このまま突っ込めば、
体当たりとなりました。

 敵の射手は身をすくめ、銃撃が止まりました。
スロットルを開いて速度を上げ、操縦桿を引き
ました。機体が空母の手前で上昇し、傾いた
飛行甲板の上を乗り越え、艦橋すれすれに
通り過ぎました。

 橋本大尉は、旋回した時、小さくなっていく
空母を見下ろしました。左舷中央から水柱が
上がりました。遅れて、水柱の中から、火柱が
噴きあがりました。命中を確認した後、二番機の
魚雷も命中したことが確認できました。

 「中隊長機より、敵空母を雷撃す。二本命中
するを確認す。11時38分。」と電報を打って
います。雷撃を終えた橋本大尉の中隊は、
定められた合流地点に向かいました。

 しかし、そこで旋回していても、友永大尉の
機体はおろか、中隊の機体が一機も見当たり
ませんでした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 二次攻撃隊 空母に接近 [山口多聞]

 橋本大尉は、発見した敵空母は炎上して
おらず、第一次攻撃隊が攻撃した空母では
ないと判断しました。友永大尉もそう判断
したようで、「全軍突撃せよ」の命がきました。

 攻撃隊の爆撃機は、友永大尉の隊5機が
右側から、橋本大尉の隊5機が左側から、
攻撃を仕掛けました。敵空母は、左右
二方向からの挟撃を振り切ろうと、面舵
一杯で右に転針し、回避運動を始めました。

 第二次攻撃隊は、運よく敵戦闘機が待って
いる空域をすり抜けて、空母に近づくことが、
できました。攻撃態勢に入ってから、敵戦闘機が
気付き、急降下してきましたが、零戦隊が
果敢に立ち向かっていきました。

 高度を落としていくと、猛烈な防御砲火が
始まりました。命中しない方がおかしいほどの
弾幕でした。友永大尉の2機が赤黒い焔を
噴きながら、空母手前で海面に落ちました。
海の中で、魚雷が炸裂し、どす黒い水柱を
あげました。

 敵の対空射撃は、右側から襲ってくる
友永大尉の中隊に集中していました。空母は
右に旋回しているので、右から来る友永大尉の
中隊からの魚雷攻撃を警戒していました。

 友永大尉の中隊は、敵空母を追いかけるような
かたちで、右旋回しました。周囲の駆逐艦が、
大小の高角砲や機関銃を、放ってきました。

 橋本大尉の中隊は、外周から右旋回するような
かたちで、追いかけるようになりました。空母の
甲板が、左に大きく傾き、海面近くに迫った
機関銃も窮屈になって、上空への射撃が
おろそかになっていました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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