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山口多聞 兵装転換 [山口多聞]

 山口少将は、兵装転換という戦場での
危険が大きく、作戦会議でも厳禁とされた
命令をしてきた司令部のいる赤城を、
後ろ手を組み、艦橋の四角窓から、
にらみつけました。

 セイロン空襲のときも、同じ命令を出して
いましたが、この時は敵機が来なかったので、
冷や汗だけで済みましたが、今この時に、
襲来されたら、たまったものではありません
でした。

 ミッドウェー攻撃には、セイロン空襲と
同じように、四空母の艦上攻撃機の半分が
参加し、残りの半分は、敵機動部隊発見の
ために、艦隊攻撃用の兵装をしていました。

 陸上施設を破壊する爆弾とは違い、艦隊
攻撃用の装備は、分厚い装甲をぶち破って、
艦内で爆発する徹甲弾や破甲弾、魚雷が
有効でした。

 ミッドウェー攻撃隊のうち、「赤城」、「加賀」は
爆撃機を、蒼龍と飛龍は、攻撃機を出撃させて
いました。

 待機している航空機は、逆に、赤城と加賀は
攻撃機、蒼龍と飛龍は、爆撃機でした。蒼龍と
飛龍は、爆撃機なので、250kg爆弾しか搭載
していませんでした(急降下爆撃なので、これ
以上の爆弾は積めません)。

 そのため、兵装転換と言っても、それほど
時間はかかりませんでした。しかし、赤城や
加賀は、水平爆撃用の爆弾や魚雷を兵装
転換するので、簡単にはいきませんでした。

 格納庫の中は、無駄がないように、あらかじめ
航空機の係留場所が決まっていました。翼が
ぶつからないように、機体の向きが定められ、
組み合わさるように定位置が決まっていました。

 その狭い間隙を潜り抜けて、5m以上もある
魚雷を、数人がかりで移動し、爆弾と交換するなど、
愚の骨頂でした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 飛龍、魚雷をかわす [山口多聞]

 艦長の命令で、巡洋艦並みの速度が出せる
飛龍は、魚雷回避のため、船首を左に向け
ました。

 全長227mの巨大な船体が、怒涛をあげ、
急旋回しました。遠心力により、甲板が右下に
傾きました。

 上空で空母の直衛をしていた零戦数機が、
急降下してきました。雷撃機は、旧式のマローダで、
しかも狙いを定めるのに300km前後の速度しか
出ていませんでした。

 零戦は急降下すれば600kmを超えたので、
雷撃機が停止しているように見えました。みるみる
急接近し、上空背後から7.7mm機銃と20mm機銃を
浴びせました。

 次々と雷撃機が火を吹き、数機は空中爆発
しました。9機のうち7機はが、魚雷発射前に
撃墜され、2機が投下したものの、飛龍の
巧みな操艦により回避しました。

 午前4時15分、旗艦赤城の艦橋で、発光信号が
明滅しました。赤城は、飛龍の右40度5km前方を
進んでおり、肉眼でも確認できました。

 信号の内容は、「第二次攻撃を実施する。
待機攻撃隊は、爆装に転換せよ。」という
ものでした。

 信号員から内容を聞かされた山口少将は、
「何を寝ぼけたことを。兵装転換は厳禁。
それを忘れたのか。」と、頭の中が沸騰
してきました。胃がきりきりしました。

 戦場での兵装転換は、危険が大きく、
避けるのが鉄則だとセイロン沖海戦で
経験しています。作戦会議でも了承
していたはずだと考えていました。

 山口少将の、表情をうかがっていた
加来艦長は、迷いながらも、司令部の
命令に背くわけにはいかず、兵装転換の
命令をしました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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