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山口多聞 機関室の状況 [山口多聞]

 後部甲板に戻ってきた小林分隊長は、
昇降機が格納庫の底まで墜ち、溶鉱炉の
底のように真っ赤な焔が渦巻いている様子を
見て、息を呑みました。

 特に中部昇降機の付近は、火勢が強く、
竜巻のような焔が舞い上がっていました。

 あたりはとっぷりと日が落ち、真っ黒な洋上で
駆逐艦の協力で、消火が進んでいました。やがて、
水雷線隊は、夜襲を決行することになり、飛龍に
横付けして消火活動していた駆逐艦は、食糧が
入った酒保物品、水樽を甲板に残して立ち去り
ました。

 萬代機関長付は、赤城、加賀、蒼龍の3空母が
被弾したのを見て、艦底にある機関室に向かい、
機関長と分隊長に報告しました。その後、戦闘
配食を受け取り、直後の対空戦闘の号令直後に、
激震が走りました。

 機関室は、被弾直後に艦内電流が絶たれ、
真っ暗となりましたが、内火艇のバッテリーで
応急照明を点け、計器類を確認しました。
機関は4機とも異常ありませんでした。

 ボイラーは、8機のうち5機が正常稼動して
いたので、最大出力は30ノットと報告して
いました。機関室は、この後大変なことに
なりました。

(追記)
 上記の夜襲は中止されています。もともと
水雷戦隊を率いていた南雲長官らしい命令とも
いえますが、飛龍の状況を見れば、これは愚作で
あるとしかいえません。

 機動部隊の主力は空母であり、空母の助力を
考えるのが、機動部隊司令長官が第一に考えな
ければならないことだといえます。この点からしても、
南雲長官が機動部隊の司令官には、ふさわしくない
と考えます。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 小林分隊長 [山口多聞]

 小林戦闘機整備分隊長は、飛龍が被弾し、
火災が起こった時、飛行甲板から発着艦
指揮所後方のポケットに転がり込みました。

 前部は火の海であり、飛行甲板は、めらめら
炎上していました。小林分隊長は、高角砲台を
つなぐラッタルを伝って後部に逃れました。

 艦尾には、内火艇やカッターが搭載されて
いる後部短艇甲板がありました。艦内から
脱出してきた乗員が大勢集まり、呆然とした
顔つきで立ち尽くしていました。

 小林分隊長は、以前蒼龍の機械分隊長を
しており、姉妹艦といわれる飛龍の構造は
見当がつきました。今は、飛龍を動かすのが
先だと考え、機関指揮所を目指そうと
考えました。

 しかし、甲板通路は熱気と煙で、近づけ
ませんでした。そこで、ラッタルを降りて、
軸室に行きました。

 そこには、三等機関兵がおり、元気よく
敬礼すると、「異常ありません」と報告して
きました。小林分隊長は、そこにあった
電話で機関室を呼んでみましたが、
通じませんでした。

 小林分隊長は、中部甲板に行きました。
そこには、機関室との連絡を取るための
決死隊が集まっていました。決死隊は、
すでに何度か試していましたが、通路の
消火用の水が沸騰していてどうにもならない
ということでした。

 消火栓は水が出ず、バケツリレーで水を
かけていましたが、たちまち蒸気になって
しまいました。そこに、駆逐艦が横付けし、
飛龍甲板までホースを持ち上げ、消火作業が
始まりました。

 次第に火の勢いが弱まり、小林分隊長は
問題ないと判断し、飛行甲板後部に戻り
ました。そこで、小林分隊長は、思わず
息を呑みました。



紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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