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山口多聞 最期 [山口多聞]

 山口少将と、加来艦長は、ウイスキーを
飲みながら語り明かしていました。途中
飛行甲板が賑やかになったことに気づき
ました。窺うと、大勢の乗員がいました。

 山口少将と、加来艦長は、そっとして
おくことにしました。姿を見せれば、
自分たちと運命をともにしかねないと
感じたからでした。乗員は、間もなく
いなくなりました。

 加来艦長は、山口少将と握手を交わすと、
一人自室へ歩いていきました。武人は、首を
とられるのを恥としており、死後に海面に浮かんで
いる遺体を回収されたら死に切れないと感じて
いました。そのため、ロープで、しっかり足元を
結び付けました。

 艦長室から銃声が聞こえました。山口少将も、
「さらば」と瞑目し、拳銃を押し当てて自決
しました。海軍軍人は、最期は自決であり、
溺死することは恥でした。飛龍は、海底に棲む
「わだつみ(海神)」に引き込まれるように
艦首から沈んでいきました。


 最後に飛龍から脱出した萬代機関長付は、
他38名と一緒にカッターで脱出していました。
しかしこの後も苛酷な航海となりました。
15日間漂流し、途中4名が死亡し、アメリカ軍の
飛行艇に発見され、救助されました。

 救助され後、一人が死亡し、アメリカ軍は、
手厚く水葬してくれました。萬代機関長付は、
テキサスのキャンプケネディで終戦を
知らされました。

 萬代機関長付は、このとき、自分たちを
発見してくれた飛行艇の機銃員のコンラッド・
フリーズ氏と、終戦後文通を続ける仲に
なっています。

 フリーズ氏は、ハワイ攻撃の際に、自分が
機銃を浴びせた飯田大尉の遺族を、墓前に
招いて、ともに冥福を祈っています。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 飛龍沈没 [山口多聞]

 萬代機関長付は、山本長官の艦隊が、近くに
来ていると判断していましたが、実際は、すでに
ミッドウェー作戦を中止して帰還していました。

 機関長は、甲板にいる機関員を集合させ
ました。すると、脱出不可能と思われた
機関室から100名以上の乗員が脱出して
いました。ここで、どうやって飛龍から
退艦するかを考えました。

 近くにカッターが一隻浮いていましたが、
カッターで100人以上乗ることはできません
でした。後部短艇甲板に行くと、内火艇が
残っていました。これなら全員逃げられる
と判断し、内火艇を降ろすことにしました。

 動力がないので、総員を二分して、ロープを
引っ張って、降ろしました。その作業の途中、
士官が、「総員、海に飛び込め。カッターは
急いで離れろ。」と声を上げました。すると、
飛龍の艦尾が持ち上がり、ドンドン高くなって
いきました。

 たちまち海面から10mほどの高さと
なりました。萬代機関長付は、ロープに
しがみつき、滑り落ちていきました。
萬代機関長付は、海中深く沈み、必死に
もがいて、浮上しました。

 飛龍の巨大なスクリューが、中天高く上がって
いました。不気味なうねり声や、内部で激しく
瓦解する音が交錯しました。艦艇が沈没する時の
断末魔の悲鳴でした。

 萬代機関長付は、慌てて100mほど離れた
カッターへ向けて、必死になって泳ぎました。
作業服に海水が入りなかなか進みませんでしたが、
靴を脱いで泳ぎだした時、腸もちぎれるような
大音響がしました。

 飛龍が沈んでいきました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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