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山口多聞 進まない消火活動 [山口多聞]

 格納庫の誘爆が続いており、ペンキが燃えて
落ちてきました。天井そのものが焼け落ちて
きそうに感じました。注水しても焼け石に水
でした。指揮所の酸素ボンベも底をついて
きており、息苦しくなってきました。

 そこに、「前部火災が、指揮所まで迫ってきた。
弾薬庫が危なく、本艦の致命的被害になるので、
全力を挙げて応急班を派遣されたい。」という
電気指揮官からの要請がきました。艦橋にも
火が回っており、退避するという報告が来て
いました。

 萬代機関長付は、「速く消火して、航進を
起こしてください。」と要請しました。
ところが通話中に音量が小さくなって
いきました。二次電源は蓄電池であり、
舵の運行に使用したため、電圧が急激に
下がっていたからでした。

 かろうじて聞き取れるぐらいの声で、機関長に
伝えることはないかと尋ねられました。相手は、
機関室が危険な状況であると誤解していると
感じました。萬代機関長付は、「消火すれば
艦は動きます。」と伝えましたが、電源が
切れてしまいました。

 萬代機関長付は、機関はまだ30ノット
出せる能力があるので、そのことを上部に
連絡したいと考えました。消火を終え、
夜間の内に敵勢力圏から離脱を
図るべきだと考えていました。

 しかし、ここに、機関とは関係ないものが
火災になっており、萬代機関長付は悪戦苦闘
することになりました。それは、通路に
積まれた米俵でした。

 今回の作戦は、ミッドウェーが最終攻略では
なく、南洋まで行く予定でしたので、大量の
食糧が廊下に積まれていました。

 艦内の誘爆は、燃えるものがなくなってきたため
収まりつつありましたが、米俵は燃え上がり続け、
萬代機関長付らの通行を妨げていました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 機関室の苦労 [山口多聞]

 機械は4機とも正常、ボイラーは5機
正常という状況で、機関はなんとかなると
考えました。

 しかし、この後、機械室に煙が充満して
きました。格納庫では爆弾や魚雷、高角砲弾が、
誘爆しはじめ、通風管から硝酸と火柱が
飛び込んできました。

 若年兵数名が意識を失って倒れたため、
萬代機関長付は、指揮所に倒れた兵士を
担ぎ込み、酸素ボンベで空気を送って
蘇生させました。

 程なくして、艦橋から、「艦は旋回する
ばかりだが、どうしたのか。」と問い合わせが
きました。萬代機関長付が見に行くと、舵が
面舵一杯のまま止まっていました。電源が
止まっていたことが原因でした。

 萬代機関長付は二次電源に切り換える
ように指示しました。その後、舵は中央になり、
艦は直進を始めました。その後、艦橋から、
消火活動に全力を挙げるので、艦を停止する
という命令がきました。

 命令を受け、主機械を止めると、機械の音が
止まり、代わりに誘爆の音が不気味に響いて
きました。

 そこに、艦橋から、消火海水が出ないところが
あるという連絡がありました。消防ポンプの半数は
一次電源で動いているので、能力が半減していた
からでした。

 萬代機関長付は、消防主管交通弁を開くように
命じ、自ら先任下士官と一緒に交通弁を開きに
行きました。そこは煙が充満しており、防毒マスクを
しても呼吸困難となり、意識が朦朧としてきました。

 部屋自体が酸欠状態なので、濾過するだけの
防毒マスクでは進めないと判断した萬代機関長付は、
慌てて引き返し、機関長に報告しました。機関長は、
艦橋に駆逐艦からの消火支援を、要請をするように
意見具申しています。

 そのような中でも、格納庫の火災と誘爆は
激しくなり、防御甲板の50cm鋼板は、真っ赤に
熱せられ、ペンキが燃えて剥がれ落ちてきて
いました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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