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巡洋艦那智 独特の仕掛け [巡洋艦那智]

 砲撃において、「撃ち方始め」の号令が
かかると、方位盤の射手は、照準の良い時に
引き金を引くことで、発令所を経由して、
発砲電路によって、全砲は一斉に発砲
していきました。

 砲塔では、直接敵艦が見えなくても、
方位盤の照準する地点へ、弾丸は精確に
射出されました。艦隊戦の時は、互いが
動いているので、砲弾が落下するまでの
間に、目標が動く距離を見越して、
発砲する必要があります。

 この見越し角は、遠くなれば大きくなる上に、
最大射程にすると、弾丸はほぼ垂直に落下
するので、標的の有効幅が小さくなり、
なかなか命中しなくなります。


 実は、那智の発令所には、他の艦にない
独特の仕掛けがありました。それは、艦橋の
コンパス上と、砲術長の頭上の箇所にある
マイクの声を、使用していない電線を
使用して、発令所長の受信機に送られる
ようになっていることでした。

 これは、研究心が旺盛だった前任の
発令所長が、細工した遺産ですが、
萱嶋氏もこれは使えると判断し、
そのまま踏襲していました。

 戦闘になると、外の様子がわからない発令所
(萱嶋氏の絵を見ると、船底にあるようです)では、
艦橋の様子が手に取るようにわかる、この
マイクのおかげで、大いに助かったと、
しています。

 (これは、どう見ても盗聴マイクになっています。
普通の職場であれば、上長の許可を得なければ
ならないことだと思いますが、艦長らの許可を
得ているものなのかは、はなはだ疑問です。)


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦那智 特徴 [巡洋艦那智]

 著者の萱嶋氏は、巡洋艦那智のことも
紹介しています。

 建造時の諸元は、すでに紹介した通りですが、
1941年に大改装を行っており、13万馬力の
機関による35ノットの速力と、耐波性、
凌波性(波をしのいで航行する性能)ともに、
極めて良好になりました。

 操縦しやすい乗り心地の良い艦だったようで、
独特の波型をしたスマートな船体で、狂瀾怒涛を
ものともせず、太平洋を馳駆する姿は、艦隊の
花形でした。

 さらに、日本軍が誇る酸素魚雷を搭載し、
敵の思いもよらぬ遠距離から、多数の魚雷を
一斉に発射して、その扇形の中に敵艦隊を
とらえ、一挙にこれを撃破する秘策を練り、
猛訓練を重ねていました。

 酸素魚雷は、那智が搭載していた20cm
主砲より、射程が長いうえに、航跡が殆ど
見えないという特徴があったからこその
戦法と言えます。


 萱嶋氏の任務である砲戦については、
以下の通りでした。砲戦は、艦長から、
方位盤の砲術長へ命令が行き、発令所を
経由して、全砲塔に伝達されるという
命令系統になっていました。

 艦長から目標を指示されると、方位盤
照準装置と測距儀が、目標に向いて
照準と、測距を開始します。

 測的所では、的速と的針を算定し、
これらのデータを、発令所で受けて、
射撃盤という計算機で諸元を算出し、
各砲塔に送ります。

 発令所は、情報センターであり、艦の
砲戦に関する一切の命令、号令、情報が、
ここに集まり、ここから中継されるばかりで
なく、敵の上空を飛ぶ弾着観測機との
通信も、戦隊内の僚艦との砲戦電話も、
ここで行われていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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