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巡洋艦那智 進軍中止 [巡洋艦那智]

 スラバヤ沖海戦における那智の砲術長以下の
下士官兵の奮闘は抜群で、絶賛に値するもの
でした。

 一方で、砲戦の合間に魚雷戦も二度ほど
行われましたが、大した戦果を上げることが
できませんでした。

 日が暮れてくると、視界が狭くなり、戦闘は
しだいに緩慢となり、ついにいずれの陣営からも
砲声が聞こえなくなりました。

 午後8時頃、全軍に進軍中止の下令がなされ、
全軍は北方へ離脱しました。弾庫を確認すると、
一門につき15発くらいしか、砲弾が残って
いませんでした。しかし、敵はまだ健在だと
思われました。

 少なくとも、那智や羽黒の砲撃戦で、これと
いった戦果は上がっていないはずでした。


 解散の知らせを聞いた萱嶋氏は、発令所に
閉じ込められて、敵艦を全く見ていない身として、
なにはさておいても、艦橋に上がって、状況を
確認したいと感じました。

 早速、二分隊長をつかまえ、話を聞くことに
しました。二分隊長は、高角砲の指揮官でしたので、
砲戦中全くやることはなく、上空警戒として高射
指揮所という見晴らしのよい絶好の桟橋で、
高みの見物をしていた人物でした。

 二分隊長は、砲戦の状況から、司令官、
艦長以下の一挙手一投足まで、子細に
観察していました。

 二分隊長は、上海事変の際に、弾丸の下を
くぐってきた人間なので、実戦経験のない
海軍大学出身の参謀よりは、よほど肝が
すわっていました。

 二分隊長の言葉は、「司令部は、すっかり
あがっていた。」というかなり辛辣な
観戦評を述べています。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦那智 余計なこと [巡洋艦那智]

 萱嶋氏は、砲術長に「距離が遠くて、
無駄弾になるので近寄ってください。」と、
進言しようと思いましたが、電話では埒が
明かないと思い、直接伝えに行くことに
しました。

 砲戦の合間を見て、発令所から上方へ
行こうと思い扉に手をかけましたが、
びくともしませんでした。

 おかしいと感じ、応急指揮所に電話
すると、円材を使ってくさびで固めた
という返事が来ました。

 艦内に閉じ込められて外の様子が
わからない応急班が、長々と続く
激戦に耐えられなくなり、被害も
出ていないのに、艦内の要所に、
早手回しで、浸水遮防の措置を
施したということでした。

 萱嶋氏は、発令所に閉じ込められたことに
なりました。萱嶋氏は、余計なことをと
思いました。

 これでは、総員退去の命令が下っても、
発令所からは、誰一人退避することが
できなくなります。

 部下に知られては士気に影響する上に、
今は戦闘中なので、目をつぶるしか
ありませんでしたが、腹の虫は
収まらず、「応急員は、することが
ないならば、弾庫に氷水でも配れ。」と、
電話しました。

 実際、延々2時間にも及ぶ砲戦の間、
高温多湿の弾庫に閉じ込められたまま、
奮闘したため、精魂尽き果てたという
ことでした。

 僚艦の羽黒では、熱中症患者を出し、
2人が死亡という結果になりまいた。

 那智は、2時間もの砲撃戦で、敵弾は
一発も浴びず、砲塔の故障も皆無で、
負傷者も一人も出さなかったという、
平時の訓練でも考えられないほどの、
好成績で終始したのは、嘘のような
幸運だったとしています。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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