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巡洋艦那智 鉄砲屋の評判 [巡洋艦那智]

 スラバヤ沖海戦の砲戦については、
遠距離砲戦に終始して、延々二時間も
無駄弾を撃ち合いながら、これといった
戦果も上げなかったというので、鉄砲屋の
評判は、芳しくありませんでした。

 水雷屋の先任参謀は、「2対5の戦闘に
おいて、3隻の敵軽巡洋艦を、レンジアウト
しておいて、我が方の被害を最小にとどめ、
夜戦でこれを撃滅する戦法をとった。」という、
戦術指導をしています。

 この結果ならば、砲戦の結果をとやかく
言われるいわれはないとしています。結果は、
大勝だったので、なんとでも申しわけはたつ
ものの、初陣という悲しさ、恐ろしさで、
無我夢中だったというのが実態でした。

 しかも、艦橋は、測的の正しい判定を
受け止められないほどあがっており、
巧妙な戦法をとれるはずもありません
でした。

 しかも、魚雷戦も、遠距離からの発射であり、
砲撃と大差ないと言えます。戦果は、オランダ
駆逐艦1隻であり、その他の百数十本の魚雷は、
海中に投棄した結果に終わっていました。

 酸素魚雷の長射程に依存し、敵の防御砲火を
恐れて、へっぴり腰の魚雷戦になりがちで、
褒められたものではありませんでした。

 スラバヤ沖海戦は、全般的に近迫猛撃の
気魄に欠け、不徹底な戦いに終始して
いました。

 全軍突撃せよの命令に対して、敵陣に
突進したまでは良かったものの、
遠距離からの魚雷発射で退避して
います。

 せっかくの突撃も竜頭蛇尾に終わって
しまったといえます。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦那智 水雷戦隊の戦闘概報 [巡洋艦那智]

 第二水雷戦隊の戦闘概報を見ると、
「大口径砲らしき着弾を認める点より
判断し、敵は、一門ないし二門の
大口径砲を搭載しあるか、または、
時限魚雷などを使用する算、
少なからず。」としています。

 これは、自分たちが発射した魚雷が、
自爆していることで生じていたもので、
これを、敵艦の大口径砲を搭載していると
勘違いしているあたり、
「幽霊見たり枯れ尾花」
ということになります。

 これは、那智が所属する第五戦隊も同様で、
魚雷の自爆を管制機雷の爆発と判断しており、
これにより、陸に近づくのを危険として、
進撃打ち切りの理由にしていました。

 第四水雷戦隊は、「浅深度発射の関係上、
魚雷発射後の自爆、あるいは、触雷による
ものも、予期以上多数あり。これが対策に
対して、速やかに研究する要あるものと
認む。」となっています。

 魚雷の自爆を認めて、対策の研究を
促しているのは立派だと言えます。
しかし、魚雷自爆の原因を、決めつけて
いるという点で、先入観に災いされて
いると言えます。

 今回の戦闘概報を見ると、弾丸雨飛の間に、
冷静沈着に事実の真相を看破することは
困難であると言う点と、それがいかに
大切かを、示しています。なまじ、
浅薄な知識が、かえって誤判断の
原因となることを物語っています。

 ただ、萱嶋氏は、測的士が、正確に判定
していた艦種や味方魚雷自爆を、参謀級の
士官が、おかしな判断をして慌てふためいて
いるのは、情けないとしています。

 むしろ、艦内の正しい評価が無視される方が、
由々しき問題で、情報処理機構と、高級幹部の
修練、実戦的技量について、重大な欠陥があった
証左ではないかとしています。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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