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巡洋艦那智 戦闘概報 [巡洋艦那智]

 戦いが一段落すると、その日のうちに
戦闘経過の概要と戦果、戦訓所見などが、
簡潔にまとめて、速報することになって
いました。

 これは、戦闘概報と呼ばれていました。
報告は、得てして身贔屓になり、まずい
ことは、屁理屈をつけて、自分に有利に
取り繕うようにする例が多いもので、
この行為を、海軍は、メーキングと
呼んでいました。

 ただ、戦闘概報は、硝煙の臭いが残る
ような時期に書かれるので、ナマの声が
反映されやすいと言えます。

 そのため、後から読み返すと当日の
ナマの心理状態を伝えており、後から
見ても興味深いものが多いと言えます。

 スラバヤ沖海戦の戦闘概報には、
「砲戦開始時に、艦型の識別しえず。
何番艦が、何cm砲を装備しているか
わからず、先頭より二隻を集中射撃し、
逐次被害を与えつつ、後続艦に目標
変更を行うのを、良策とみとめる。」
となっていました。

 実際は、見張りや、測的では、艦型は
正確に把握しており、参謀がわかって
いなかったというだけの話でした。しかも、
この後の砲戦指導のことは、何も言及されて
おらず、事後弁明になっているだけでした。

 砲戦の最中、砲戦指導そのものがなかった
というのが実態であり、このような報告を
鵜呑みにして戦史を編纂するとどのような
状況になるのかと感じたとしています。

 先頭より二隻を集中射撃し、逐次被害を
与えつつ、となっていますが、戦闘艦を夾叉
した直後に目標変更の命令がなされ、萱嶋氏は、
もったいないことをしていると、感じていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦那智 艦橋内の様子 [巡洋艦那智]

 二分隊長の、「司令部はあがっていた。」
という辛辣な観戦評を聞き、萱嶋氏は、
発令所のマイク越しに聞いていた艦橋の
様子と一致すると感じました。

 艦橋では、敵艦の識別も、ろくに行われて
いないように感じました。次に二分隊長が口に
したのは、艦橋幹部の人物評でした。

 「一番良かったのは司令官で、全軍突撃せよの
下令の前に、四股を踏んでから、手につばきを
してから号令を下したあたり、秀逸であった。」
とのことでした。

 「先任参謀は、まずまずという感じで、
砲術参謀は落第だとしています。肝心な時に、
どこへ行ったのか、わからなかった。」と
しています。

 萱嶋氏は、どうりでいくら待っても号令が
下らないわけだと納得しました。

 「艦長は、文字通り、口角アワとばして、
口のまわりを真っ白にしていた。」という
ことでした。

 他にも、敵が使っていた着色弾の話や、
魚雷戦は距離が遠く、戦果につながらな
かったという、極めて参考になる話を、
聞くことができました。

 測的所で、萱嶋氏の代わりに指揮を
していた測的士は、「味方の魚雷が、
盛んに自爆していました。」という
話をしていました。

 これは、後になって、新式の
慣性爆発尖の不良によるものだと
分かりました。

 しかし、これに驚いた各隊は、自分の
魚雷が爆発するとは思わないので、
まちまちの誤判断をして、その後の
戦闘指揮に大きな影響を及ぼし、
混乱を招きました。

 スラバヤ沖海戦は、艦隊砲撃戦における
貴重な教訓を残した海戦だったと言えます。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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