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巡洋艦熊野 狭い海域での回避運動 [巡洋艦熊野]

 敵機は、TBF20機と、SB2C10機の
合計30機でした。厄介な相手でした。

 急いで、一番砲塔に掲げていた日の丸を
引っ込めました。増速が命じられましたが、
その分、航跡が大きくなりました。敵編隊は、
熊野の周囲を旋回していました。

 対空戦闘の準備ができ、熊野の波を切る音と
爆音が交錯するうちに、不気味な時間が
刻一刻と経過しました。

 島に囲まれた海面は、運動力の大きい
熊野にとって、やや狭く、しかも、
付近には、機雷を敷設したところが
あり、そこを避ける必要がありました。

 主砲と高角砲、機銃が火をふきました。
編隊の近くには、黒い花が、点々と音もなく
開いていきました。SB2Cの編隊は、高度を
上げて、縦隊を作り、TBFは散開して、高度を
下げました。

 敵機による、雷撃と爆撃の同時攻撃が
始まりました。熊野の左右に、次々と
水柱が上がり、機銃弾が、雨とそそぎ、
四方から魚雷が這い寄ってきました。

 水柱の飛沫が、艦橋をたたいていきました。
一瞬、攻撃が途絶えた時、伝声管から航海長の
声がしました。それは、左近允氏に対して、
機雷の状況がどうか尋ねるものでした。

 左近允氏は、回避運動で大きく傾いている
艦橋で、脚をふみしめて、コンパスを抱え、
急いで島の頂きや先端の方位を測りました。

 そして、海図台に走り、海図に三角定規を
当てて、測定しました。黒っぽい海水が
くっつき、やりにくかったものの、
なんとか割り出し、航海長に
報告しています。

 敵は、攻撃を終えましたが、旋回して、
再度来襲する気配を見せていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦熊野 サンベルナルジノ海峡に入る [巡洋艦熊野]

 艦艇から航空機の識別をするのは、
九九艦上爆撃機のように、脚が
引っ込まないものは例外として、
相手は小さく、ほとんどが単葉の
低翼か、中翼なので、かなり
難しいと言えます。

 正面からとなるとほとんどお手上げ
でした。しかも、瑞雲は、はじめて見る
機体なので、なおさらと言えます。

 マリアナ沖海戦において、敵機動部隊に
向かった大編隊が、味方識別のバンクを
しなかったことから、熊野を始めとした
艦艇が対空砲火したことがありました。


 午後3時30分前後、味方の編隊を
見かけました。零戦と九九艦上爆撃機
39機の編隊でした。

 それまで10機以上の編隊は、敵だと
思って間違いはありませんでした。
そのため、この編隊は頼もしいと
感じました。帽子を振って、攻撃隊の
成功を、心からお祈りしながら、
搭乗員を見送りました。

 予定より早く、日没1時間前に、
サンベルナルジノ海峡に入りました。
これから、前日とは逆のコースを通って、
フィリピン中部を、西進して、コロン湾に
向かいました。

 熊野は、速やかに敵機の行動圏を脱して、
戦力を回復する必要がありました。空襲の
恐れがない夜になるのが、待たれました。

 海峡の最狭部を通過してまもない、
午後5時過ぎ、にわかに艦橋の付近が
ざわめきまいた。見上げると、小型機が
4機見えました。

 人見艦長が、左近允氏に、「敵か、味方か」と、
尋ねてきました。左近允氏は、眼鏡で確認し、
敵機であることを報告しました。

 すぐさま対空戦闘のラッパが、鳴りましたが、
これが合図になったように、次々と敵機が
現れました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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