SSブログ

巡洋艦那智 快勝 [巡洋艦那智]

 萱嶋氏は、発射を終えてホッとしている
水雷長に、魚雷到達までの時間を、尋ね
ました。すると、12分30秒という
返答が来ました。

 萱嶋氏は、この12分30秒は、長く感じられ、
何度も時計を確認したとしています。この間も、
敵味方双方が、同じ態勢で航走しながら、
ときおりぽつんぽつんと撃ち合っていました。

 航走するうちに、12分30秒が過ぎましたが、
何の音沙汰もありませんでした。萱嶋氏は、
心配になり、じっとしていられなくなりました。

 艦橋では、総員が右舷に集まって、
固唾をのんで見守っていました。この時、
萱嶋氏は、海軍の警句、「左警戒、右見張れ。」
を思い出しました。一方に気をとられて、
反対側の注意を怠るなということです。

 萱嶋氏は、敵に駆逐艦がいたはずだと
思いだし、左舷側に回って、双眼鏡で確認
しました。しかし何も見えず、異状は
ありませんでした。

 左舷側は、月明かりが煌々と照らして、
明るくなっており、見逃す心配はありません
でした。

 ヤレヤレと思った途端、部下がとんできて、
「轟沈です」という報告をしてきました。
萱嶋氏は、見そこなったと思い、右舷に
駆け戻ると、敵陣とおぼしきあたりに、
大火災が今も崩れ落ちるところでした。

 「敵一番艦轟沈」という報告が来ました。
続いて、「4番艦に魚雷命中」という叫びが
聞こえてきました。そして、轟然たる大火柱が
立ち上りました。

 こちらは一番艦と違い、すぐには沈みません
でした。艦尾が吹き飛んでいましたが、まだ
浮いていました。しかし、日が火薬庫に
入ったと見えて、猛烈な爆発をはじめました。

 凄絶と言える様で、那智艦内では、万歳を
しながら、快勝を謳歌しました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
nice!(0)  コメント(0) 

巡洋艦那智 乱戦模様 [巡洋艦那智]

 闇夜の鉄砲とはいえ、那智のトップの
照準器は、敵の艦影をとらえていました。

 そのため、照準することはできました。
しかし、弾着観測ができないので、撃った
弾丸が、どこへ落ちたのか、その行方が
見えませんでした。

 距離が目測で、弾着が見えないでは、
命中を期待することはできませんでした。
しかも、砲弾が、残りわずかとあって、
一斉射撃ではなく、砲塔の右砲と、
左砲を交互に撃つという、「交互撃ち」と
いう撃ち方になります。

 これでも消耗が激しいとなったら、
1門ずつ指令して撃つ、「指令撃ち」に
なります。萱嶋氏は、砲術長は、頭が
痛くなるだろうとしています。

 一方、敵も中間地点に照明弾を撃ち
上げたことから、自ら目潰しを食らった
格好になり、修正弾が一向に近づいて
きませんでした。両方とも、やみくもに
射撃する乱戦模様でした。

 この状況は、日本軍にとって良かったと
言えます。砲戦で牽制している間に、
魚雷戦の準備を整えて、絶好の射点に
つくことができるからでした。

 魚雷が命中するまで、敵には直進を
しいるようにすれば、目的達成と
なります。そこで、並行のコースで、
緩慢に撃ち合いを続けました。

 そして、ついに、「魚雷戦」の号令が
かかりました。扇状に12本の魚雷を撃ち、
敵の編隊をすっぽりカバーしようという
ものでした。

 「発射はじめ」の号令で、那智から8本、
羽黒から4本の魚雷が発射されました。
全艦隊の期待は、この12本の魚雷に
かかっていました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。