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巡洋艦那智 配置につけ [巡洋艦那智]

 1942年2月27日午後4時59分、
那智の艦内に、「配置につけ」の
ラッパが、けたたましく
鳴りわたりました。

 思い思いの休憩をしていた乗員は、
各自の戦闘配置にすっとんでいきました。
那智の総員は、すでに事業服に着替えて、
夕食も済ませていました。

 萱嶋氏も白の正装に身を固め、自らの
戦闘配置である発令所に入りました。開襟
半袖の服になれた南方では、なんとも
暑苦しい服装でしたが、一世一代の
初陣を飾る晴れ着のつもりで、
洗いたてを身に着けていました。

 糊でバリバリのワイシャツで、首が痛い
くらいでしたが、「合戦準備。昼戦に備え。」
という命令が下り、受け持ちの兵器を試動して、
戦闘準備をしました。

 各砲塔、方位盤ともに、的確に動いており、
すべての操作に支障はありませんでした。
この間も、双方の艦隊は、20数ノットで、
まっこうから突進していました。

 那智の観測機2機が直ちに飛び立ち、
これらの飛行機からくる報告で、敵情は
さらに明らかになりました。

 今や、敵は5隻の巡洋艦に対して、
こちらは那智と羽黒の2隻が、がっちりと
四つに組んで、まず砲戦で雌雄を
決めようとしていました。

 日本海海戦以来の艦隊決戦という、
またとないチャンスに、萱嶋氏も
いささか興奮していました。

 闘志が燃え上がり全軍の神経は、
早くも鋼のようにピンと張っていました。
このまま進めば、左舷戦闘の同航戦に
なる公算が大きいと言えました。

 となれば、どのような戦法を取るべき
なのだろうかと、考えました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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巡洋艦那智 対応の遅れ [巡洋艦那智]

 蛇行しながら進み、スラバヤに入港という
飛行機からの報告に引きずられた、参謀の
判断は甘いものがありました。

 飛行機の位置情報は、出発点からの方位
距離か、陸上基点からの方位距離で示して
いました。出発点からの方位距離の場合、
艦の位置情報のズレが、そのまま入ることに
なります。

 今回の艦載機の報告は、出発点と陸上基点の
両方を使っており、これらの報告が殺到したため、
敵の艦隊行動がおかしなことになっていました。

 しかし、この検証もせずに方針を決めたため、
船団は予定通り上陸地点を目指し、第四水雷戦隊も
反転し、船団の位置に帰ってしまいました。

 しかし、ドールマン少将は、日本軍の位置の
確定情報を得るや、スラバヤ入港を断念し、
反転に転じました。敵にはり付いていた那智の
偵察機から、すかさず、「入港の気配なし。
反転。」という報告が飛び込んできました。

 この報告からすると、日没前に会敵することが
確実となり、第五戦隊は、再び増速して南下し、
第二水雷戦隊、及び、第四水雷戦隊に、
「敵を誘導しつつ合同す。」と発信し、
敵に向かって進撃しました。

 第二水雷戦隊は、飛行機からの報告を
受けた時点で、直ちに発動していましたが、
第四水雷戦隊には、受信が遅れ、予定通り、
船団に行動に移るように命令していました。

 しかし、その後、敵が反転したことを知り、
直ちに第四水雷戦隊をまとめて、敵方に
向かいました。敵方は、疲労しているとはいえ
単縦陣の航行をしているのに対し、日本軍は、
全軍が揃っていないという状態でした。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
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