SSブログ

巡洋艦那智 艦橋の混乱 [巡洋艦那智]

 萱嶋氏は、集音マイクにより、艦橋の
混乱状態を感じ取り、測的士に対し、
もう一度艦橋に敵艦名を届けることを
命じました。

 そうこうするうちに彼我の距離は、
急速に接近しつつありました。各艦に
射撃配分しなければならない時機に
きていました。

 このままでは、射程距離に入っても、
すぐに弾丸が出ないということになります。
しかし、艦橋からは、砲撃号令はきません
でした。

 萱嶋氏は、しびれをきらし、独断で
一番艦に集中射撃する準備をすることに
しました。

  萱嶋氏が命ずると、測的が開始され、
那智と羽黒の方位盤が、敵一番艦(旗艦)に
測距をはじめました。

 大測距儀から、敵までの距離が射撃盤に
入っていきました。測的所で算出された的針、
的速も注入されていきました。経過図に
平均距離と、照尺距離が流れていきました。

 緊張の頂点にあった時、突如、ズシーン、
ブルブルという大激動が、船体をふるわせ
ました。一斉射撃をしたときのような振動
でした。

 発令所の視線は、萱嶋氏に集中しました。
しかし、那智は、まだ射撃していませんでした。
萱嶋氏は、「敵の射撃だ」と叫びました。敵に
先制を許した上に、肝を冷やすほどの至近距離
でした。

 この時になって、ようやく艦橋から、
「一番艦、撃ち方始め」という号令が
下りました。

 何もかもスッとばした号令でしたが、
萱嶋氏がすでに命じていたことでしたので、
発令所以下の準備はできていました。

 「一斉撃ち方、発令発射。」が命令され、
最後の修正を行うと、ブザーがなり、
赤ランプが点灯することで、
射撃用意完了となりました。

 撃てを示すブザーが鳴りました。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
nice!(0)  コメント(0) 

巡洋艦那智 戦隊砲戦 [巡洋艦那智]

 これから日本軍が相手する敵艦隊は、
隻数が上回り、巡洋艦も2対5と、
不利な状態でした。

 どのように攻撃していくかを
決めるのは、司令部の役割ですが、
萱嶋氏は、一刻も早く決めてほしいと
願いました。

 戦隊砲術(戦隊として、統制のとれた
砲戦)を行う時は、司令部の命令を、
旗艦の発令所が僚艦に伝えられ、
これを受けた各艦の艦長が、砲術長に
命令するという手順になります。

 いつもであれば、戦隊砲戦の命令が
スラスラ出てくるはずが、肝心のこの
一瞬になっても、一向に号令が
きませんでした。

 時は、刻々とうつり、両軍の距離は、
ぐんぐんつまってきました。

弾着観測機から、「敵戦闘機が見えたので、
雲の中に退避する」という電報を受け、
このままほっておくわけにいかなく
なりました。

 平素の訓練で、彼我の距離に応じて
とるべき手続きは、わかっていました。

 萱嶋氏は、司令部に代わり、戦隊砲術の
命令を下命して、一切の準備を、備えて
おこうと決意し、観測機に砲戦観測配置に
つくように命じました。

 司令部は、立ち上がりの遅れた戦闘序列の
整形に、手一杯だったようでした。

 午後5時41分、敵が視界内に入って
きました。測的所の大型眼鏡は、次々に
敵の艦型をとらえ、的確な識別を行って
いました。しかし、艦橋からは、何も
言ってきませんでした。

 おかしいと感じた萱嶋氏は、艦橋に
仕掛けた集音マイクを調整し、聞き耳を
立てることにしました。そこに飛び込んで
きたのは、騒然とした混乱状態でした。


紹介書籍:重巡「最上」出撃せよ
著者: 「矢矧」井上芳太、「那智」萱嶋浩一、「熊野」左近允尚敏、最上:曾禰章、「五十鈴、摩耶」井上団平
nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。