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巡洋艦大淀 弛みによる不覚 [巡洋艦大淀]

 横須賀出て8日目、蒸し暑い居住区を 抜け出した小淵氏は、甲板に出て、まだ 見たことのない南洋の島々や、そこにいる 巡洋艦大淀がどんな軍艦なのか、想像して いました。  大淀は、一本煙突のスマートな軽巡洋艦 ときいていましたが、最新鋭艦ということ なので、きっと素晴らしい軍艦に違い ないと物思いにふけっていました。  その時、小淵氏は、ハッと大事なことに 気づき、脱兎のごとく走りました。見張りの 当直時刻でした。小淵氏が行くと、全員整列 していました。  一分遅れたか、遅れていないと思いたかった ものの、たるんでいるとして、制裁を受けました。 小淵氏は、制裁された両の頬がひどくほてるのを 感じながら、持ち場につきました。  当直は、12時から2時まででした。煙突を 背にして、いつものように海面を見張りました。 空は澄み切っていて、星が輝いていました。 その星を眺めていると、小野沢兵長のことを、 思い出しました。  当直から1時間半ほど経過した頃、「もうすぐ 交代がくる」と思った途端、睡魔が襲ってきました。 洋上を吹く風は、初夏のそよ風のように優しく 頬をなで、背を持たれかけている煙突は、 適温でした。  機関の響きが眠りを誘う子守唄のような リズムでした。午後2時に近づき、睡魔に 負けた小淵氏は、筥崎丸の船足を援助する ように、舟を漕いでいました。  その時、「ライセキ」という鋭く叫ぶ声が 聞こえました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 艦船での入浴 [巡洋艦大淀]

 小淵氏が、筥崎丸に乗ってトラック島に 向かう前、アッツ島が玉砕したという話が 流れており、衝撃がありました。  そのため、容易ならざる戦局とはだれしも 感じていました。しかし、筥崎丸は、まだ 切迫した雰囲気ではありませんでした。  月月火水木金金と、訓練が続けられて いる艦隊勤務につく前の休養なのか、 戦闘前の精神作用なのか、軍隊にも こんな事があるのかと、不思議に思える くらい呑気な毎日でした。  これで少し居住区が広くて、食事の量が 多ければ天国だとしています。食事は、 茶碗一杯の飯と味噌汁、3切れの沢庵だけで、 船酔いのためあまり食べられないから、 それで十分なはずということでした。  筥崎丸の居住区では気の合った者同士の グループができ、色々な遊びごとをして いました。小淵氏は、戦艦金剛に乗り組む という小野ニ曹と親しくなりました。というより、 小野ニ曹を中心に、6人ぐらいのグループが できたとしています。  小野ニ曹が、「眠らずに デッキに立ちて  涼を追う」という上の句を読み、小淵氏が、 「波に砕ける 十五夜の月」という、下の句を 作って、興じていました。  この頃には、かなり南に来ていることがわかり、 便乗車でいっぱいの居住区が、次第に蒸し暑く なってきました。そんなある日、入浴が許可され ました。行ってみると、海水による風呂で、 上がり湯はありませんでした。  艦船では、真水は貴重品であり、小淵氏は、 食事のお茶くらいで、洗面などもしたことが ありませんでした。筥崎丸は、相変わらずの 船足で、トラック島を目指していました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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