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巡洋艦大淀 対空戦闘 [巡洋艦大淀]

 秒時計を睨みながら12秒間隔でブザーを 鳴らしている上曹は、いつもの戦闘訓練と 変わらぬ、沈着な素振りでした。  訓練と違うのは、撃てのブザーで発射 される6門の主砲の轟音が艦を揺さぶり、 物凄い反響が起き、防火塗料が剥げ 落ちてくるくるくらいでした。それも、 砲撃が続くうちに、少なくなってきました。  大淀の主砲弾は、敵機の先頭集団を捕え、 見事な斉射を続けました。初弾の発砲は、 27000mの射程距離に入るや、否やで 行われました。  数度目の斉射の時に、敵機がバラバラと 撃墜されていることが、通報されました。 続いて、敵機は編隊を解き、四方に散ら ばっていったと伝えてきました。  快速で突っ走っていても、敵機は追いすがって 四方八方から、襲撃し始めました。12秒間隔の 速射をしている主砲の発砲音を遮るように、 高角砲も発砲しました。  13000m以内に敵機が侵入してきたよう でした。艦内は物凄い轟音に包まれ、 さながら鉄箱の中で、外から乱打 されているようでした。  その合間に25mm機銃の発射音も聞こえ だしました。大淀は、艦が激しく上下に 震動し、キューンと舷側をかすめる 不気味な潮鳴りが伝わり、ドンドン 傾き傾き始めました。  「右舷60mに至近弾」と伝令の奥村兵長が 叫びました。砲術長鈴木孝一少佐が、間髪 入れずに外の様子を説明してくれました。  主砲も高角砲も機銃も、向かってくる 敵機を補足しては、激しく咆哮しました。 トップから次々と撃墜していることが通報 されましたが、敵機が多数なので、後から 後から襲撃してきました。  至近弾で揺れる回数も次第に多くなって きました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 戦神の化身 [巡洋艦大淀]

 主砲発令所からでは、艦の外の様子は 分かりませんでしたが、射撃盤、射撃盤、 測距盤で敵機の動きは分かりました。  トップ伝令が、逐一敵機の行動や機種・ 機数などを通報してくれるので、艦外の 様子もかなり詳細に知ることができました。  大淀は、物凄い快速で突っ走って いました。自速計の針は40ノットを 通過し、次第に上がっていきました。  舷側をかすめる海水の音が鳴り、艦が 巨大なバイブレータのように震動していました。 小淵氏は、この震動で骨が粉々に砕ける のではないかと思えました。  速度計がリミットの45ノットを指し、振れ 止めとなった時、砲撃はじめのラッパが 高らかに鳴り響きました。  来襲したのは戦爆連合の大編隊で、 その数は106機でした。たった4隻に、 これほどの大編隊が襲撃されるのは、 聞いたことがありませんでした。  大編隊で押し寄せた敵機は、さながら 烈風に乗って天駆ける黒雲のごとく、 4隻の艦を目指して突進してきました。  あくまでも澄み切った紺碧の大空を またたく間に押し包み、烈日をもさえぎり はじめました。  その前面下の洋上を、あらん限りの 快速で疾駆している4隻は、まさに風前の 灯に等しい状態でした。  その黒雲の押し寄せる先頭集団の 前面に、大淀の主砲弾は炸裂し、 中の散弾がさらに放射状に広がり つつ、敵機に向かって飛散しました。  艦長の篠田勝清大佐は、防空指揮所で、 八幡大菩薩の破魔矢を振りかざして、 指揮していました。それを目撃していた 電探長は、戦神の化身と思える姿で あったと、後々の語り草にしていました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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