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巡洋艦大淀 雷跡通過後の騒ぎ [巡洋艦大淀]

 雷跡が全て抜けてから、筥崎丸はようやく 変針を始め、魚雷の発射された方向に船首を 向けつつありました。  しかし、この時、右舷にいた海防艦が 接近し、筥崎丸に船首に接触させて しまいました。  悲鳴のような汽笛を鳴らし、黒鉛をどっと 吹きあげながら、離脱しました。海防艦も 魚雷の発射された方向に急行しようとして 回頭していたことは間違いなく、筥崎丸の 回頭が遅れていたら、激突していました。  筥崎丸の船内は、雷撃があったというので、 蜂の巣をつついたような大騒動になって いました。みな、救命胴衣をつけて上甲板に 飛び出し、ボートのまわりで大騒ぎしていました。  驚いたことに、既に何人かは、ボートに 乗り込んで底にへばりついて動こうと しませんでした。しばし待ての号令は 全く忘れているようでした。  筥崎丸で一番落ち着いていたのは、 見張りについて一部始終を見ていた 小淵氏らで、夢でも見た跡のようにあっ気に 取られていました。不思議なことに恐怖心は、 全くおきませんでした。  雷跡を一番早く発見したのは、艦尾 左舷を担当していた臨時の見張員で、 船橋には、一番多くの見張員がいたにも かかわらず、そこからは、発見したという 伝令はありませんでした。  小淵氏と同じ場所の左舷のを任されて いた御仁も、小淵氏同様舟を漕いでいた ようで、魚雷が通過してから、雷跡と叫んで いました(小淵氏は、雷跡通過前に気づけた ので、マシということになります)。  幸運にも、筥崎丸は7本の魚雷の真ん中に 挟まれ、無策であったため、難を逃れたという ことでした。回避していたら命中していました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 魔物に襲われる [巡洋艦大淀]

 「ライセキ」という鋭く叫ぶ声が聞こえた 小淵氏は、睡魔が吹き飛び、我にかえり、 前方海面を注視しました。何事もありません でした。  素早く回廊を回り、左側の洋上を見ると、 青白い尾を曳いて、突進して魔物が ありました。伝声管にとびつき、「左舷 より雷跡、左舷よりライセキーイ」と 叫びましたが、何の応答もありません でした。  青白い魔物は、筥崎丸目掛けて、突進 してきました。3条、4条、5条と次々に 襲いかかり、足下に迫ってきました。  船首に衝突と見えた瞬間、魔物は船首を かすめて、右舷方向に飛び去りまいた。 しかし、後の魔物がみるみる迫ってきました。 青白い尾の魔物が、2本、3本、4本と 筥崎丸の船腹目掛けて、飛びかかって きました。  しかし、どれも船首ギリギリをかすめ、右手 方向に突っ走っていきました。しかし、まだ 魔物の襲撃は終わりませんでした。続いて 突進してくる3条が、船腹にまともに迫って きました。  次第に青白い筋が急迫し、やられたと観念 しましたが、船尾すれすれを抜けていきました。 続いてきた魔物も、船尾すれすれをかすめて 抜けていきました。  船尾後方には、赤い月が沈みかけており、 満月でしたが、気味悪いほどに赤く染まって いました。まるで、人の魂のような月でした。 この時になって、筥崎丸は、汽笛を鳴らし ました。  船橋から空に向けて機銃が一斉に発砲 し始めました。船尾では、8cm野砲をどこに 向けて撃ったらよいのか、激論していました。 結局後方に向けて放たれ、風を切って弾丸が 飛び去りました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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