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巡洋艦大淀 居住区へ向かう [巡洋艦大淀]

 小淵氏が並べた衣服を、分隊長と、 分隊士は、艦船勤務に必要な品物のうち、 何がないとか、「艦内靴はもらわなかった のか」などと質問しながら、衣服点検を はじめました。  軍艦の中では、艦内靴という白い ズック靴を履いていました。それに、 熱帯地方なので、防暑服が貸与 されていました。  不足品は、後ほど支給するということで、 持ち物検査は終わりました。分隊士は、 「ついてこい。」と言い、タラップを駆け 上がり、狭い通路を通り、艦尾に向かい ました。そして、ここが、お前の分隊だ と言って、すぐに引き返していきました。  居住区での挨拶の方法は、筥崎丸で、 古参の兵長などに教えてもらっていました。 早速挨拶しようと居住区を見渡しましたが、 夕食後の休憩らしく、それぞれの場所で、 将棋や囲碁に興じていました。  皆、陽焼けして赤黒い顔をしていましたが、 その中で最も上級者らしい一団のところへ 行き、直立不動の姿勢をとり、帽子をとって 深々と頭を下げ、一礼してから大声で 申告しました。  「海軍上等水兵小淵守男、ただいま 横須賀海軍砲術学校より転勤して参り ました。なにとぞよろしく御願い申し 上げます。」というものです。  同じように居住区の各所にいる人達に 挨拶して回りました。ロッカーの裏側にも 下士官がいたので申告すると、下士官が、 「なかなかよろしい。しっかりやれよ。」と 応じてきました。瞬間、背後から爆笑が 上がりました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 厳しい空気 [巡洋艦大淀]

 小淵氏らが内火艇に乗り込むと、 「右舷離せ。前進微速。ヨーソロー。」の 号令がかかり、内火艇が動き出しました。  走り出すと、前部のホロを荒々しく はねのけて、兵曹長の艇指揮が覗き 込みました。そして、「貴様たち。 お客様ではない。外に顔を出して 見張らんか。」と叱りとばしてきました。  小淵氏らは、慌てて顔を出し、 あたりをキョロキョロを見回していたら、 「馬鹿者。一人は反対側を見張るんだ。」と、 再び一喝されました。言われてみれば 最もでした。しばらくゆくと、薄暗い海に ブイが見えました。  「左30度にブイが見えます。」と小淵氏が 叫びましたが、指揮は無言でした。そんな 物は、とっくに見つけていたようでした。 この兵曹長は、見張りがいかに重要な ものか教えこんでいるつもりだろうと 考えました。  うかうかしていられないと、改めて 大淀の厳しい空気を、ひしひしと 感じました。  内火艇は、5のノットくらいで10分近く走り、 大きな軍艦に近づき、その舷梯に横付けと なりました。これが、軽巡洋艦大淀でした。 筥崎丸からは、島の影になって、見えない 位置に停泊していました。  舷梯を駆け上がると、舷門に執銃した 番兵が立っていました。そこへ、小淵氏が 配属される第二分隊の分隊士がやってきて、 分隊長室に連れて行かれました。  分隊長の大尉の4平方mほどの小さな 部屋に入った小淵氏は、型通り、転勤の 申告をしました。そして、担いでいた衣嚢を ひろげ、中の被服を取り出して並べました。 衣服点検でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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