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巡洋艦大淀 見つめられる不思議 [巡洋艦大淀]

 6m測距儀からの報告が入り、続いて 8m測距儀からも、7000,6000, 5500と報告が入り、小淵氏は、 いらだちを感じていました。  しかし、発射のブザーを押す福井上曹は、 落ち着いて射撃盤の追尾状態や、砲塔の 準備を確かめていました。  そして、新目標に初弾が発射され、 続いて発射用意のブザーが押されました。 そして、撃てのブザーがやや長く押されて から、ニ斉射目の発砲音が、艦を揺さぶりました。  その直後、突然、艦は上下に激しく振動し、 ぐんぐん傾き始めました。みな、倒れかかって、 射撃盤や壁にしがみつき、一斉に小淵氏の方を 見つめました。誰の顔にも、血の気が失せ、 「やられた」という不安の表情でした。  小淵氏は、なぜ自分を見ているのか とっさに判断がつかず、艦が傾いていく ことより、恐怖にかられた顔が自分に 向いていることが、不思議に思えました。  艦の傾きは、やがて止まりました。それまで ブザー台にしがみついていた奥村伝令が、 「今の至近弾」と、大勢を立て直しながら、 晴れ晴れとした声で、砲術長の説明を 伝えました。  艦の傾きは、雷撃を回避した時のもので、 艦の舷側3mくらいのところを、魚雷が並走して、 ギリギリ回避したということでした。その声を 聞いて、助かったという微笑がみなぎりました。  そして、みんなが見つめていたのは、 小淵氏ではなく、伝令の奥村兵長を見て おり、兵長が倒れた時に、たまたま小淵氏の 脇に来たということでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 弾切れ [巡洋艦大淀]

 大淀は、あわや横転すると感じたほど 大きく傾いたのは、高速で突っ走って いた時に、転舵したためでした。  大淀の航海長は、操艦にかけては 海軍随一と噂される内田信雄中左で、 投下弾を見定めて、それをうまく回避 したのでした。  回避運動は、頻繁にやられると、 方位盤が目標を外してしまうので、 止むを得ない場合以外には しませんでした。  先程の敵機も勇敢に突入して爆弾を 投下した時に、ニ斉射目の主砲弾に粉砕 されました。しかし、敵機は後から後から 押し寄せて、激しく襲撃してきました。  編隊の先頭集団は、主砲の先制攻撃に 怖じ気ついたのか大した襲撃ではありません でした。しかし、後続の敵機は、果敢な襲撃 でした。艦は、無数の至近弾のために、 激しく揺すられ続けました。  長い対空戦闘が展開されているカビエン沖に、 なぜか味方機の姿はありませんでした。敵は、 4隻の艦を一挙に撃沈せんものと、かさに かかって猛襲してきました。  海は沸き返り、弾幕は空を覆いました。 巨大な水柱は、滝立つ瀬となり、絶え間なく 甲板を洗いました。  激戦40分、すさまじく咆哮する主砲は、 対空弾も底をつき、残り少ないことが、 弾庫から報告されましたが、敵機の 猛襲は止まりませんでした。  ついに、弾庫から対空弾がなくなったと 報告されました。すでに、常時搭載量の 300発を撃ち尽くしてしまったようでした。 一瞬、発令所は重苦しい空気に包まれ ました。  しかし、豪気な砲術長の鈴木孝一少佐は、 「演習弾でも、水上弾でも、何でも良いから 揚げろ。それを撃て。」と命じました。そして、 主砲は、演習弾を込めて砲撃を開始しました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 見事撃墜 [巡洋艦大淀]

 各砲の発砲音、敵機の爆音、至近弾の 炸裂音、それらの轟音でカビエン沖は、 天地も張り裂けんばかりとなりました。  百余機の大敵を敵に回して、軽巡2隻と 駆逐艦2隻は、激烈な対空戦闘を展開 していました。小淵氏は、マレー沖で 撃沈されたプリンスオブウェールズと、 レパルスもこのように激しく襲撃されたの だろうかと考えました。  されど、大淀は強かったとしています。 いまだ一機たりとも接近を許さず、向かって くる敵機は爆弾を投下する前に、主砲・ 高角砲・機銃の餌食となって、バラバラに 四散し、洋上に飛び散りました。  凄まじい対空戦闘は続きました。発令所員は、 冷静に各自の任務を遂行していました。大淀の 戦闘分隊のモットーである、「訓練は戦闘と思え。 実戦は、訓練であると思って臨め。」とされており、 それを実践していました。  号令官の押すブザーが鳴り、轟音を残して 主砲が発射されました。発砲記録装置に ついていた一曹が、「二斉射眼弾着。 見事撃墜。」と、余計なことまで付け 足して報告しました。  「いまの敵機撃墜」と、トップより通報され、 これを聞いて発令所員一同に微笑がみなぎり ました。  一瞬、ホッとした気分が醸し出されていた時、 伝令が殺気立った声で、「目標変え、左前方 より突っ込んでくる敵機。」と早口で 怒鳴りました。  旋回盤・射手盤の赤針が目まぐるしく動き、 やがて、静かな動きとなりました。方位盤が 目標を捕えました。続いて、6m測距儀の 上曹から、距離が伝えられました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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