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巡洋艦大淀 内火艇 [巡洋艦大淀]

 小淵氏は、自分が乗る大淀を探すことに しました。  松田兵曹に尋ねると、「軽巡は3本煙突で、 あそこに五十鈴や多摩がいるので、軽巡は あの辺りにかたまっているようだから、その あたりにいるのだろう。」と教えてくれました。  大淀は1本煙突ということで探しましたが、 見つかりませんでした。筥崎丸は、艦艇の 並ぶ泊地を左にして、奥地へ進んでいきました。 そこには、枯木立の林さながらに輸送船の マストが、林立していました。  ここまで来ると、島影となり、軍艦の姿は 見えなくなりました。碇泊すると、まもなく 夕食になりました。夕食を済ませると、みんな 第二種軍装に着替えて、迎えが来るのを 待ちました。  やがて、日没になり、美しい基地はまたたく 間に暮色に包まれました。西方が、燃える ように明るかったものが、それが次第に薄れ 始めつと、緑の島々が黒ぐろとした影に 変わって、いきました。この泊地の日没は、 急激でした。  まもなく、大淀の乗組員の呼び出しが ありました。小淵氏は、居住区の人達に 挨拶を済ませると、衣嚢をかつぎ、 大急ぎで舷門に向かいました。  背後から、「頑張れよ」「元気出やれよ」などと 励ましの声がかかりました。小野兵曹は、 舷梯のところまで来て、見送ってくれました。 舷梯には、一隻の内火艇が横付けになって 待っていました。  大淀の乗組員は、自分だけと思っていた 小淵氏でしたが、他に一等機関兵がいました。 前部の居住区にいたようで、航海中は 気づきませんでした。  内火艇に乗り込んだ小淵氏らは、座席に かしこまったふうに座りました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 連合艦隊の勇姿 [巡洋艦大淀]

 島影が、2つ、3つ見える頃、空に爆音が 聞こえてきました。  近海を哨戒している基地の飛行機でした。 海面を滑るように進んでいくと、海底が、白、 赤、青、茶と様々な色に変化していきました。 海底の珊瑚や磯花でした。  筥崎丸は、基地の入口の南水道から 環礁内に入っていきました。このトラック島は、 天然の要港と言われ、環礁内に大小様々な 島が点在していました。  環礁の入口は、北水道と、南水道の二箇所 しかなく、通常は、南水道だけ使用し、北水道は 閉鎖されていました。南水道の両側には、ヤシの 木や熱帯樹が茂っており、そこに監視所が あるそうですが、船からは見えませんでした。  やがて、島の間から戦艦や巡洋艦の艦橋が 見えてきました。便乗者は全員、上甲板や 見晴らしの良い場所に陣取って基地内の 光景やかたずを呑んで見つめていました。  小淵氏は、見張りに立つ煙突の回廊に 登りましたが、そこも鈴なりとなっていました。 船が進むに連れ、各種の鑑定が集結して いるのが、一望できました。  壮観であり、背筋が続々する感激に打たれ ました。これが音に聞く連合艦隊の勇姿 でしたが、表現すべき言葉を知らなかったと しています。  広大な環礁内には、大小の艦艇が思い 思いの場所に碇泊していました。それを 眺めながら、下士官や兵長連中が、小淵氏を つかまえ、「あれが長門、あれが金剛、山城に 似ているあれが扶桑だ。」と教えてくれました。  生まれて始めて見るこれらの勇姿に、 小淵氏は驚愕するばかりでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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