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巡洋艦大淀 暗闇の爆撃 [巡洋艦大淀]

 全員戦闘配置につき、ただちに砲撃の 用意を整えました。  しかし、暗夜の上空を飛来する敵機を 補足することはできませんでした。星を さえぎる影を認めても、それを測ることは 不可能でした。  下手な砲撃をすれば、自分の位置を 知らせるようなものでした。苛立たしい 何とも言いようのない不気味な時が 流れました。  やがて、敵機は上空に飛来し、爆弾を 投下し始めました。大量の爆弾に、艦が 激しく揺り動かされ、ときどき椅子から 投げ出されました。  はじめは遠くで炸裂音が響いて いましたが、それが次第に迫って きました。艦は前後左右とはげしい 震動に見舞われました。  急迫する炸裂音に、それがいつ直撃と なって艦を打ち砕くかそれをただじっと 耐えることは、辛く苦しいものでした。  砲撃できないことがこれほど辛いもの だとは思いもしていませんでした。いっそ、 暗夜に思いっきりぶっ放したらと、誰もが 考えていました。  大淀は、静かに前進しては停止し、また 前進しては、停止を繰り返していました。 その後方から炸裂音が次第に迫って きました。  その炸裂する爆弾にあおられるように 前進と停止を行い、爆弾灯海域から 離脱していました。  急速に進むと、夜光虫の光で、敵に 位置を知らせる結果となるので、艦を 滑らせるように艦長と副長が、苦心して 操艦していました。  大淀が停泊していた付近に、物凄い 爆弾の雨が降り注ぎ、何百という水柱が 林立し、やがてそれらが消えると共に、 大淀の艦影がなくなったので、他の艦は、 大淀は撃沈されたと思ったと、述懐 されました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 大和、内地に帰還 [巡洋艦大淀]

 対空戦闘があった行われた日の夕方、 大和、長門、金剛の戦艦3隻が、軽巡洋艦 矢矧と、駆逐艦浦風、雪風、磯風が従って 静々と動き出しました。  聞けば、それらの艦は、内地に帰還する ということでした。やがて、高雄も重傷の身を 引きずるように動き出しました。  高雄は、内地まで帰還できないので、 セレター軍港に回航するとのことでした。 小淵氏は、これらの艦を羨ましいとは 思いませんでした。  むしろ、傷ついて帰らなければならない 大和や長門などが哀れに思えました。 泊地内に残ったのは、戦艦榛名、巡洋艦 足柄、羽黒、大淀、駆逐艦清霜の5隻と なりました。この5隻が無傷の艦でした。  小淵氏は、5隻しかいないことに、心細い という気持ちより、「皆やられてしまっても、 大淀は生き残るぞ。どこまでもやり抜くぞ。」 という勇気が湧いてきました。  泊地に夜が訪れました。この日から、小淵氏は 番兵として艦橋下の衛兵室につめていました。 寝静まった艦内は、通風口から吹き出している 冷房の音がかすかに響いているだけでした。  上甲板を吹き渡る夜風は赤道下とは 思えないほどの涼しさでした。少し雲が あるのか、いつもより星の輝きも薄れ、 南十字星も見えませんでした。  夜は静かに更けていました。当直に立って 30分くらいした頃、体に響くようなかすかな 音響を感じました。  最初は耳鳴りかと思いましたが、やがて 地鳴りのようになり、高空からのものと分かり ました。大型機の大編隊が発する爆音 でした。  配置につけのラッパが鳴り渡りました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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