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巡洋艦大淀 バウメン [巡洋艦大淀]

 海上で仮泊していた艦隊は、伊勢と日向は、 リンガ泊地に向けて出港し、足柄、大淀、朝霜、 霞、杉、樫、榧の7隻は、セレター軍港に 向かいました。  せまい水道を遡ると、間もなくジョホール市が 見えてきました。セレター軍港には、傷ついた 重巡洋艦高雄が、相変わらずの姿で、碇泊 していましたが、他には入港している艦船は ありませんでした。  港内に入ると、大淀は、桟橋に横付けと なり、総員洗濯用意が号令されました。全員が 汚れ物を抱えて上甲板に出ると、陸上から ホースがつながれ、尽きることなく真水が 出ました。  皆大喜びでした。というのも、艦隊勤務で、 こんなに思う存分真水を使える洗濯は、 めったにあることではありませんでした。  やがて、洗濯物が正月の満艦飾よろしく、 上甲板に張ったロープに干されました。 次いで、艦内の大掃除が行われました。  掃除中、分隊士が公用で出かけるため、 ニ分隊の内火艇が降ろされました。内火艇 には、2名の艇員が必要でした。  1名は、操舵手兼機関長で、もうひとりは、 バウメンですが、このバウメンに、小淵氏が 抜擢されました。  バウメンは、艇の舳に立って、爪竿で 相手艦の舷梯などに横付けしたり、離したり する役目のことで、内火艇は、その艦の分身と 言われており、バウメンは厳格な動作や 態度が要求される重要な役目でした。  小淵氏は、この日は波もないので、気安く 引き受けました。内火艇は、ジョホール市近くの 桟橋に横付けしました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 去年同様、海上での大晦日 [巡洋艦大淀]

 総員が大掃除に汗を流していた時、突如、 配置につけのラッパが鳴り響きました。  敵機は、1機だけで高高度を飛んで いました。B29と呼ぶ敵の最新鋭の 大型機に、この時はじめてお目に かかりました。  B29は、艦隊の前方はるか彼方を斜めに 横切って間もなく姿を消したので、配置に つけはすぐに解除されました。しかし、これは 偵察に来たと判断され、大掃除は取りやめに なり、直ちに出港することになりました。  慌ただしくサンジャックを出港した艦隊は、 どこへ向かっているのか、夜中になっても 航行をやめようとしませんでした。大晦日も 艦隊の航行は続きました。  小淵氏は、去年も、大晦日は航行中だったと、 思い出しました。あれから1年が経過し、色々な ことがあったと振り返っていました。  大淀は、精悍に戦い続け、赫々たる戦果を 上げてきました。そして、今年もまた、赤道直下で 正月を迎えることになりました。  やがて陽が沈み、空には星がまたたき始め ました。その星を見ていると、子供の頃の 大晦日の夜のことなどが、思い出されました。 大淀も足柄も、従っている駆逐艦も、静かな 洋上を黙々と航行していました。  1945年元旦の朝日が静かに昇りました。 午前8時過ぎ、シンガポール島の東方海上で、 突入艦隊を伊勢と日向が出迎えてくれました。 仮泊すると、伊勢と日向から、正月用の餅が 届けられました。  その餅が昼食に雑煮として出されましたが、 つぶつぶが多い上、酸っぱくなっていました。 暑さで傷んでしまったようでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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