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巡洋艦大淀 サンホセ港に突入 [巡洋艦大淀]

 死地へと驀進する大淀と足柄の左手には、 黒々としたミンドロ島が横たわり、洋上は 不気味に沈黙していました。  その海面に二条の太くて白く長い航路を 曳いて突進していく2隻は、千数百人の 火の玉となった闘魂を孕んで、サンホセ港 の北口に突入しました。  サンホセ港は、半円の浅く湾曲した港で あり、南端に突出した半島のような岬があり、 その根元の所が深く入り込んでいました。 (半島ではなく、イリンという小島であると、 小淵氏は後で知らされたとしています)。  大淀と足柄は、速度を落として湾内の 艦影を探りつつ南下しました。月光の さえぎられた湾内は、黒々とした島影を 背にして、漆黒の闇に包まれていました。  闇の中に潜む敵艦は、間違いなくレーダーで 大淀と足柄が湾内に突入したのを捕捉している はずでした。敵が撃つのが先か、大淀か足柄が、 敵艦影を発見するのが先かとなりました。  見張りと、上甲板以上の戦闘配置の者は、 瞳をこらして敵を探り続けました。「闇の中に 閃光が上がるか」、「何か物音が聞こえないか」、 息づまる瞬間が刻々と重なりました。  捨て身になって爆発する千数百のエネルギーが、 押さえに押さえられている一瞬でした。その状態の まま、港内を探りつつ、なおも奥へと進撃して いきましたが、敵は撃ってきませんでした。  やがて、前方に黒々とした島が横たわって いるのが確認できました。大淀は左に転舵し、 島の左手奥に進みました。島は平坦な陸地 なので、敵艦の影を見逃すことはありません でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 まっしぐらに港内を目指す [巡洋艦大淀]

 ミンドロ島西岸の島影を縫って驀進する 大淀と足柄に、各所の島影から突如として 敵高速魚雷艇の大群が襲いかかって きました。  大淀、足柄のまわりに群がり寄せる 魚雷艇は、獲物にありついた餓狼の 群れでした。  その餓狼の群れから、何十条という 魚雷が、発射されました。これは、遠距離 だったため、十分回避できました。中には、 勇敢に突進して来て、雷撃するのもいました。  これらには、探照灯の照射が命じられ ました。向かって来る敵に、ぱっと探照灯を 照射すると、すかさず高角砲が発砲しました。  これよりはやく、敵が煙幕を張り、逃げ込んで しまったため、命中は確認できませんでした。  魚雷艇の襲撃は執拗でした。各所に分散して、 待機していたとみえ、次から次へと、新手が 雷撃してきました。  大淀と足柄は、群がり襲う敵を高角砲で 蹴散らしながら、港内を目指しました。 ようやく追いついた味方の駆逐艦隊が、 敵魚雷艇の中に突進していったので、 大淀と足柄の二隻は、まっしぐらに港内を 目指して進撃しました。  しかし、行く手にも何隻かの魚雷艇が 待機しており、次々と雷撃してきました。 海面は何十条となく雷跡が飛び交い、 魚雷艇の発する騒音は洋上に轟き 渡りました。この敵に対し、大淀と足柄は、 両舷の高角砲を猛射しながら、驀進しました。  目標は、港内突入であり、あらん限りの 高速で突進していきました。この快速に、 もはや追いすがる敵はいませんでした。  静かになった洋上を一路死地へと 驀進する二隻に、時折雲間から月光が 注ぎました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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