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巡洋艦大淀 運の強い星の持ち主 [巡洋艦大淀]

 2月23日早朝から、敵機の爆音が上空に 轟き渡りました。大型機の来襲でした。  しかし、雨雲が低く垂れ込め、機影は 現れませんでした。爆音は遠ざかったり、 近づいたりしていました。敵機が、艦隊を つけ狙い始めたようでした。  やがて、不気味な爆音が高まって きました。「配置につけ」の号令がなされ、 砲撃準備を整えました。  しかし、雲の上の見えない敵機を砲撃 する事はできませんでした。時々、雲間から 爆弾が降り注いできました。  敵機は、上空からレーダー爆撃をして いるようでした。しかし、強風が爆弾を 吹き流しているようで、艦隊からは 大部それて水柱を林立させるだけ でした。  しかし、いつそれが艦隊の真上から 降り注ぎ、直撃するかしれませんでした。 敵機は、一日中艦隊をつけ狙って いましたが、日没とともに引き揚げ、 上空は静かになりました。  薄暗い空から大粒の雨が横なぐりに 降りつけ、嵐がやってきました。その波を 飛び跳ねながら、突進して来た魔物が、 大淀の左舷1kmの所で自爆しました。  海が荒れていると、波頭が白く砕ける ので、雷跡の発見は困難ですが、その 波が魚雷を自爆させ、大淀は、危なく 難を逃れました。大淀は、運の強い星の 持ち主でした。  2月24日も朝から爆音が聞こえ、時々 爆弾が降ってきましたが、風はますます 強まり、洋上は激しく荒れ狂いました。  そのためか、執拗につけ狙ってきた 敵機も、あきらめたのか、爆音も聞こえなく なりました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 地獄街道を北上 [巡洋艦大淀]

 洋上は、闇に包まれ、低く垂れ込めた 雨雲は、風を呼び波も高まってきました。  この夜、北号輸送作戦と名付けられた 艦隊は、敵潜水艦からの雷撃を2度 受けましたが、全艦無事でした。  この北号輸送作戦は、軍令部の予想は、 半分帰還できれば上出来で、悪くすれば 全滅すると予測していました。  この頃、敵の機動部隊や多くの水上 艦隊が沖縄攻略のために、その周辺に 集結中であったからでした。  すでにフィリピン島にも、B29の基地が 出来上がり、制空圏はずっと拡大されて おり、艦隊が内地を目指したとしても、 敵の制空圏内を数日航行しなければ なりませんでした。  また、この艦隊が、台湾海峡を通過 しようとすれば、沖縄に集結中の敵艦隊が 進路上に進出して、待ち伏せするのも 容易でした。  敵機動部隊が沖縄近海にいるとすれば、 台湾海峡を無事に通過したとしても、 内地まで追撃されることになりました。  北号輸送作戦の艦隊は、地獄街道を 北上するに似た、危険極まりないもの でした。  袋のネズミ同様の、南西方面艦隊を 放置しておくよりも、内地で逼迫している 航空燃料や、重要物資を満載して内地 帰投を命じて、1隻でも帰り着けば というのが、この作戦の発令でした。  北号輸送作戦の艦隊は、甲板上にガソリンを 満載していました。敵機の銃弾1発が命中 しても、爆発炎上し、艦を焼き尽くすのに 充分な量でした。  誰が考えても、「全艦無事内地に帰投する ことなど、到底できまい。」と、思っていたのは 当然でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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