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巡洋艦大淀 鰹節 [巡洋艦大淀]

 忙しい日課明け暮れでしたが、小淵氏は 一つ楽しみがありました。  シンガポールで購入したバナナを、発令所の 入り口にダクト上に隠しておいていました。そこ にはスチームのパイプが通っているので、うまい 乾燥バナナができると考えていました。  その目論見通り、乾燥バナナとなっており、 航海中少しずつ食べていました。そこには、 鰹節も隠していました。  それは、筥崎丸でトラック島に向かうときに、 「艦が沈没しても鰹節一本あれば、3日は 生きられる。これをかじりながら3日間浮いて、 救助された者がいた。  艦に乗ったら、鰹節かスルメを、肌身はなさず 持っていることだ。」という助言をもらったから でした。残っている鰹節も、今では小さい物となり、 とても二日と生きられそうにありませんでした。  早速、上陸の時にでも買って補充しなければと 思いましたが、この頃は、食糧事情が悪く、 なかなか手に入らなくなってしまいました。  呉軍港は、入港以来、平穏な日々が続いて いました。時々、駆逐艦などの出入りがありま したが、巡洋艦以上は動く気配がありません でした。  小淵氏は、横須賀に帰ったため、姿が 見えない長門がいないことに気になり ました。  この頃、横須賀にいた空母信濃が 撃沈したという話を聞きました。武蔵が 沈んだというのも、小淵氏にはデマとしか 思えませんでした。  2月26日、小淵氏は艦外作業員として、 軍需部の倉庫に医薬品などを取りに 行った時、出撃いていく特殊な船を 見ました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 北号輸送作戦完了 [巡洋艦大淀]

 積み荷の積み下ろしがほとんど終わった日の 午後、作業を打ち切って、総員の洗濯が ありました。  内地の水は、指先がしびれるほど冷たい ものでしたが、長い航海で汚れ物が 溜まっていたので、みんな待ち かねていた洗濯でした。  洗濯が終わると、そのすすぎ水で、今度は 艦内の大掃除が行われました。一航海すると、 洗濯があり、大掃除が行われるのは、どの 艦も同じでした。  夕食後、入湯上陸が許可されたので、 小淵氏は、3人の仲間と一緒に市内の 旅館に行きました。そこで久しぶりに 入浴して、畳の上の布団に潜り込みました。  一緒の仲間は、「やはり布団は寝心地が 良いなあ。」と言いながら眠りにつきましたが、 小淵氏は、汽車の汽笛がいやに耳につき、 背筋がゾクゾクと寒くなっていたので、 なかなか寝られませんでした。  翌朝起きると、外は銀世界でした。かなりの 積雪で、呉市では、近来にない大雪という ことでした。艦に戻ると、雪はきれいに片付け られていました。その日も、残った物資の 積み下ろしが行われました。  一日中かかってやっと全部の積荷を 降ろし、これで、任務が完了ということに なりました。重要物資の陸揚げを完了した 大淀は、港内のブイに繋留して艦内の 整備作業を行いました。  甲板上のリノリュームの補修や、長い 航海で錆の出た外舷の塗装など、作戦 行動中に手入れのできなかった箇所が、 次々と補修されました。  この後、大淀は碇泊中の日課に戻り、 いつものように甲板掃除が行われました。 若い兵士は、元気に甲板を這い回って いました。古参兵の号令に合わせ、 掛け声も高らかに威勢よく行って いました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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