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巡洋艦大淀 輸送作戦始まり [巡洋艦大淀]

 2月10日午後5時、出港ラッパを 鳴り響かせながら、各艦は行動を 起こしました。  港内にさざ波の波紋が広がって いきました。背後には、ジョホール市が かすんで遠ざかりました。  狭い海峡を出はずれ、洋上を 進んでいく艦隊を夕闇が包みはじめ ました。  上空はいつしか雲が湧き、星影も まばらでした。海原は、雲に覆われ どんよりとしていました。マレー半島を 北上し、仏印の南岸を進んでいく艦隊は、 まだ敵に発見されていませんでした。  2月12日、日没にはかなり間がある 洋上でしたが、曇天のために薄暗くなり、 風も強まって波が立ち、騒ぎ出して いました。  その時、突然、「配置につけ」のラッパが、 けたたましく鳴り響きました。伊勢が艦隊の 右前方に水上艦隊らしきマストを発見 したようでした。  そのマストはすぐに見えなくなりましたが、 「敵との交戦は、極力避け、物資の輸送を 目的とせよ。」という命令なので、艦隊は 進路を変更して航行しました。  その少し前、南膨島の水中聴音所より、 「今朝方、敵の大艦隊が、台湾の西方 海域に向かった。」という無電もあり、 艦隊の首脳部は、極度に緊迫している 様子でした。  そこで、大淀は、航路上の偵察に、水偵を 発進させ、先刻の水上艦艇らしきマストを 確認させました。しかし、その近辺には何も 見当たらず、マストは、浮上中の敵潜水艦 ではないかということになりました。  大淀の水偵は、艦隊の進路上を偵察 しながら、台湾の水上機地に飛んで いきました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 女は乗せない巡洋艦 [巡洋艦大淀]

 積み込まれた水銀やスズ等の小物は、 艦内の居住区に積み込み、大型の物資は、 甲板上に山と積まれました。  航空用のガソリンのまわりには、生ゴムの 固まりが積み上げられ、銃撃の防護用と されました。  上甲板に満載された物資はシートで 覆い、ロープで厳重に結束されました。 その作業をしていたところへ、今まで 見張りに立っていた兵長が交替で 戻ってきました。  「伊勢と日向には、女の人なども乗り 込んでいたぞ。」と言っていました。内地に 引き上げる軍属の家族のようですが、 大淀には女性は乗ってきませんでした。  そこで、兵曹が、「女は乗せない巡洋艦」と 歌い出したので、皆笑いながら、再び作業に 取り掛かりました。  午前中で搭載作業が終わると、引き続いて、 臨戦準備が命じられました。その後、総員集合が かけられ、艦長の訓示がありました。  「このたびの作戦は、重要物資の内地輸送が 最大目的で、戦闘は極力避ける。しかし、 航行は決して容易ではない。敵潜水艦が 待ち受けているだろうし、敵機は、艦隊が 出港すれば、すぐにも来襲することだろう。  それに、敵の水上艦隊や機動艦隊も立ち はだかる公算が大である。あくまで物資輸送が 目的であるが、前途に立ちはだかる敵は、 撃破して進まなければならない。  内地にも敵機が来襲しているということから、 この物資が完全に陸揚げされるまで、任務を 果たしたことにはならない。  この作戦の目的は戦闘ではないが、戦闘 以上に重要な任務であると、肝に銘じて行動 してもらいたい。」というものでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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