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巡洋艦大淀 呉軍港に無事帰還 [巡洋艦大淀]

 2月20日早朝、艦隊は、無事に呉軍港に 入港しました。それも、全艦無事に帰投 しました。  入港用意の号令を聞くまでもなく、 非番の者は、上甲板に出て、久しぶりに 接する内地の光景をあかずに眺めて いました。  軍港内には、去年の11月にブルネイで 別れた大和の勇姿がありました。戦艦榛名も 無事に帰還していました。他に、重巡洋艦 利根と青葉、軽巡洋艦矢矧などが 停泊していました。  港内に堂々と入港した北号輸送作戦の 艦隊は、所定の位置に投錨すると、すぐ 内火艇やランチが降ろされ、便乗してきた 人達が上陸していきました。  間もなく、伊勢、日向、大淀に物資の 受け取りの舟艇が集まってきたので、 小淵氏らは、陸地をゆっくり眺めている ことはできなくなりました。  寒風の中で、作業が始められ、甲板上に 山と積まれたドラム缶が次々に降ろされて いきました。  せわしなく動き回る乗組員の顔は、 底抜けに明るいものでした。その陽焼け した顔をなでる寒風も気にならないのは、 内地に帰りつけたことによる喜びのせい だと感じました。  日没には物資の陸揚げ作業も打ち切られ、 帰還祝いが許可されました。その騒ぎたるや、 1万余tの艦も揺さぶられるほどでした。  翌日も、重要物資の陸揚げが続けられました。 積み込むときは、一個ずつ担いで運んだ水銀や スズも、甲板上に広げられたモッコの中に運び 込むと、デリックに吊り上げられ、いっぺんに ダルマ舟に移されていきました。  こうして甲板上の積み荷はほとんど片付きました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 上海で仮泊 [巡洋艦大淀]

 筥崎丸に出会ったのは、上海の東方海域でした。  何の防御も持たない老朽船の筥崎丸が、今まで 無事でいたことは奇跡というべきでした。小淵氏は、 やはり運の強い船というのはあるものだと感じて いました。(筥崎丸は、3月19日に、雷撃を受け、 沈没しています)。  この頃、嵐を避けていた敵機動部隊が、にわかに 活動を開始しはじめました。この通報を受けた艦隊は、 内地までの直線距離は最短の位置まで来ていましたが、 敵機の襲撃を避ける必要がありました。  そこで、日本本土から上海に向かう艦隊のように 見せかけるため、艦隊は反転し、一旦通り過ぎた 上海に向かいました。  午後9時頃、上海の下流に仮泊しました。陸地 からは、20kmも離れており、艦上から遠くにかすかに 中国大陸が眺望でき、街の灯火がほのかに見受けられ ました。  翌日10時頃出港した艦隊は、黄色く濁った海を 北上しました。この時、B29が1機、艦隊上空を通過し、 大陸の方に飛び去りました。それは、日本本土を 空襲し、対空砲火で損傷したので、緊急着陸するの だろうと、観測しました。  翌日も黄海を航行していました。黄色い海面が、 果てしなく続いていました。日没に近い頃、第三 配備法(戦闘配置の当直を解除する司令)が、 伝達されました。  艦隊は、黄海を横切り、朝鮮半島の南西部に 沿って、航行していました。空は、久々に晴れ、 すがすがしい青空が広がっていました。  左手には、陸地を近々と眺めながら、点在する 大小の島々を縫うようにして航行していきました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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