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巡洋艦大淀 食糧の横流し [巡洋艦大淀]

 宴会のあった日の午前中に、隊内に ある物資は全員に分配され、あとは5人の 保管員が、必要とするものだけが残され ました。  小淵氏は、役立ちそうにないものは、 全て出していました。その方が、せいせい すると思っていました。  一方で、年配の国民兵は、鍋や釜、 洗面器まで持っていきました。このため、 宴会の時は、兵舎はすっかり片付いており、 この中で、宴会は続けられました。  宴会の最中、芦野兵曹長の、「この野郎。 軍法会議にまわしてやる。」という激怒した 声が響き渡りました。  突然の出来事に小淵氏はあっけにとられ ました。芦野兵曹長は、主計下士官に 殴りかかろうとして、小林上曹に 引き止められていました。  芦野兵曹長が、食糧を分配しようとした時、 あまりにも少ないので不審に思い密かに 調べていました。主計下士官が、民家に 横流ししていたことをつきとめたので、 このような騒ぎになったようでした。  芦野兵曹長は、軍法会議と言っていましたが、 果たして今も軍法会議は存続しているのだろうか と考えました。しかし、小淵氏は、この下士官を もっと制裁すべきと感じていました。  海軍では、このような行為は罪が重く、 練習兵の一人が、教官室にあったお菓子を 盗んでつかまった時は、禁固刑になって いました。そして、進級は停止されてしまった ということでした。  このことを考えると、殴られるくらいでは 済まない行為でした。小淵氏ら特年兵は、 厳しく鍛え上げられており、戦争が終わっても、 食糧を横流しするなど、夢にも考えられない ことでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 金子上水 [巡洋艦大淀]

 金子上水に、小淵氏は、「日本は負けて しまったが、朝鮮は独立が約束されたそうだ。 嬉しいだろう。」と話しかけたことがありました。  金子上水は、むっと怒ったようにうつむき ました。小淵氏は、これからどうなるか分から ない日本より、独立を保証された朝鮮が 羨ましく思えていましたが、金子上水は、 歓びなどなく、日本人になりきって海軍に 志願したのにという思いのようでした。  金子上水は、宴会の準備ができたことで、 呼びに来たようでした。平野兵曹は、 「よし行こう」と先立って歩き出しました。 小淵氏も一緒に兵舎にいくと、全員が 揃っていました。  食卓には、昨日まで見られなかったご馳走が 並べられ、自活のために飼っていた子豚も 料理されて、各自の皿に盛り分けられて いました。すでに席の中央に陣取っていた 一曹らは、ヤケ気味に飲んでいました。  平野兵曹は、酒があまり飲めませんでしたが、 顔を赤くしていました。未成年の小淵氏は、 食い気の方が旺盛でした。  この宴会には、帰郷する下士官もおり、 彼らは、残留する小淵氏らに気兼ねして いました。しかし、小淵氏から見ても帰郷 できる歓びがありありと出ていました。  妻子を残していた人達なので、敗戦の 悲しみより、帰郷の歓びの方が、大きかった といえます。小淵氏は、それをとがめる気は ありませんでした。  小淵氏は、単純に帰りたいとは思って いませんでした。むしろ残留を命じられた ことを嬉しく思っていました。他の4人の 残留者も、残されたことを残念だと思っては いないようでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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