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巡洋艦大淀 励まされる [巡洋艦大淀]

 旅館を改めて見ると、裏手に木が覆い かぶさって茂っていました。街では、 これも山というのだろうかと感じましたが、 間違いなく探していた旅館のようでした。  落ち着いてよく見ると、さっきから何度も 通っているところでした。それでも分からな かったのは、うかつに飛び出していったから だろうと感じました。  改めて案内してくれた人が、神様のように ありがたく感じました。何度もお礼を言い、 餞別にもらったいくばくかのお金を 差し出し、好意に報いようとしましたが、 静かに小淵氏の手を払いました。  そして、「散歩していたところだよ。海軍に 志願してきたのだろう。海軍でもお金は 必要だから、大事にしまっておきなさい。 これから大変だから、一生懸命頑張り なさいよ。」と励ましてくれました。  小淵氏は、なぜ海軍に志願したと、何も 言っていないのに分かったのだろうかと 感じました。そして、一般の市井の人が 燈火管制の中で散歩するはずがないと、 気づきました。  おそらく、海軍の士官クラスの人で、艦が 入港したので、久しぶりに母港の街を散歩 していたのだろうと想像しました。もしかしたら 艦長クラスの人かもしれないと思いました。 そのような想像をして、心が和んできました。  一緒に出かけた仲間はまだ帰ってきて いませんでした。小淵氏は荷物の整理を 始めました。そして、門限に近い頃、どやどやと 帰ってきました。街が暗いので、見つからな かったとしています。  彼らも小淵氏と同様だったと、おかしさが こみ上げてきたとしています。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 マンホール? [巡洋艦大淀]

 辺りが暗くなってきました。旅館に戻ろうと 一人で歩きだしましたが、街は燈火管制のため、 暗闇になっていました。店舗も皆締め切って、 街路を歩いていると、歩き出しました。  店舗もみな閉め切って街路を歩いている 人影もありませんでした。何とはなく、周囲の 様子がおかしい事に気づきました。帰る旅館の 方角がわからなくなっていました。  来た時の倍も歩いているのに、旅館には たどり着きませんでした。駆けるように探し回り ましたが、焦れば焦るほど迷路に入ったように わからなくなりました。  小淵氏は途方にくれ、誰かに教えてもらうより 方法はないと感じました。しかし、周りに通行人は いませんでした。  泣き出したい気持ちで歩き回っていると、 前方に人影を見つけました。和服を着た中年の 人でしたが、地獄に仏とはこのようなことを 言うのだろうと感じていました。  「大黒屋という旅館がどこにあるか知りませんか」と 尋ねると、「前の道路にマンホール2つある旅館 だろう。」と言われましたが、マンホールが何か わかりませんでした。  「よく覚えていません。」と返答すると、「うしろが 山になっている旅館ではないか。」と反問して きました。それも記憶になく、そう返答すると、 「ついて来なさい。」と言って、歩き出して しまいました。  10分ほど歩き、「この旅館ではないかね。」と 言われました。周囲は暗かったものの、廊下の 板張りには見覚えがありました。また、道路に 鉄の蓋があり、これがマンホールと呼ぶものだと 分かりました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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