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巡洋艦大淀 1日最後の罰直 [巡洋艦大淀]

 吊床降ろしの訓練が、巡検ラッパで 中止となると、海兵団は、死んだような 静寂に包まれました。  やがて、兵舎の端から当直士官が、衛兵を 連れて、先任伍長の先導で、各分隊の点検に やってきて巡検と声をかけました。  巡検が終わると、「巡検終わり。煙草盆だせ。」 の号令がかかり、明日の日課などを、当直教班長が 通達し、ようやく1日が終わりました。  一般兵や志願兵は、喫煙所で、故郷の話などを しながら過ごすことになりますが、練習兵は、タバコは 支給されない(吸う人もいない)ので、週に二度くらい 支給される一袋の菓子が、唯一の楽しみでした。  通常巡検が済めば、全て終わりですが、時として 罰直になります。朝の起床時に吊床で靴下を 履いていた者がいた、他分隊の教班長から、 分隊員の誰かが、不正行為を見つけられたとか、 犯人が定かでない時に、分隊員全員で行われました。  罰の内容は、教卓に足をかけ、手を床につけ 腕立て伏せになる、梁にぶらさがる、衣嚢を 頭上に差し出すなどの体制で、じっとしていろと 言うものです。木枯らしが吹きすさぶ寒中でも、 この体罰で、汗びっしょりとなりました。  犯人が自首するまで続けられるので、時に やっていないのに、名乗り出る勇者がいました。 分隊員全員に及ぼす苦痛を考えると、 「俺が犠牲になれば。」と考える健気な者が 出てきます。  しかし、教班長は、こんなことは百も承知で、 徹底的に犯人が見つかるまで、続けられました。 教班長は、目星がついているのか、長年の 経験からか、海兵団で不正行為やずるい考えを 起こさせないように、厳しい教育が行われていました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 1日の最後の訓練 [巡洋艦大淀]

 「総員吊床降ろせ。」の号令で、吊床 格納所からだした吊床を一斉に吊り 始めましたが、これは、1日の最後の 訓練となりました。訓練というだけあり、 これも気が抜けませんでした。  居住区には、吊床を吊る梁が、3m間隔 ぐらいに通っており、フックが出ていました。 それに、吊床の頭部になる丸環をかけ、 足の方になる丸環にロープがついている ので、ロープをフックに掛け、丸環とフックを 三往復させ、結束します。  吊床5箇所に括ってあるロープを解き ほぐし、それを輪にしてまとめ、吊床頭部に 納めます。これも訓練なので、動作が 悪かったり、教班長の機嫌が悪いと、 何度となく吊り直しをさせられました。  吊った後も、高さが不揃いだったり、 括り紐を結束しないで丸め込んでおくと、 「全員括り紐だせ。」と言われました。そして、 出すと、床に垂れ下がることになります。  こうなると、号笛が鳴り響き、「総員起こせ。 総員吊床納め。」と、なります。朝の起床時の ように、素早く吊り床を括り、一本の太い丸太の ようにした吊床を抱えて、教卓の横に整列し、 終わった教班から申告します。  再び、当直教班長の号笛が鳴り出すと、 今度は真剣に身構えました。「総員吊床 降ろせ。」の号令が終わるやいなや、 分隊員全員の大活劇が展開され、 素早く吊り終えた教班から申告します。  これを40秒以内に、しかも、上手に吊れて いないと、何度でも吊り直しを命じられました。 背の低い人には、苦労させられるものでした。  何度のやっていると、巡検のラッパが鳴り 響き、訓練は中止となるので、この名曲に 聞き惚れることになりました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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