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巡洋艦大淀 入団式 [巡洋艦大淀]

 団内の草むしりがあらかた終わった頃、 洗濯の命令がありました。  分隊員全員が着替えをし、汚れ物を 抱えて、洗濯場に集合しました。そこで、 教班長に海軍式の洗濯方法を教えて もらいました。しかし、誰もうまく洗え ませんでした。  時間が限られているので、全部洗うのが やっとで、それを乾かす場所も決められて おり、金網が張り巡らされていました。乾く まで当番が、立って見張りをしました。  明日の9月10日、入団式が行われる という通達がありました。ヒゲなどを剃って おくように命令され、あまり伸びてもいない ヒゲをぎこちなく剃っていました。  そして、軍帽に横須賀海兵団と書いてある、 ペンネントを取り付け、第二種軍装を着て、 襟飾りの付け方なども教わりました。  生まれて初めて着る水兵服に、皆大喜び しましたが、大半の者は、大きすぎる軍服に 閉口していました。  靴もなかで遊ぶほど大きすぎるものが 多いという状況でした。しかし、「服や靴に 合わせろ。」と言い返されました。教班長は、 よほど合わないもの以外は、取り替えて くれませんでした。  軍帽なども、汗取りの中に紙を入れたりして、 やっと合わせた滑稽な姿となり、「どうも新兵は、 軍服が身につかないな。」と教班長は、笑い ながら話していました。  翌朝、快晴の練習場には、9月1日付で 入団した新兵が整列しました。その三分の一 ほどが、第一期練習兵で、誰も神妙な顔つきで、 海兵団長の現れるのを待っていました。  やがて、小柄な海兵団長勝野実少将が、 衛兵伍長の先導で、壇上に上がりました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 海兵団での生活 [巡洋艦大淀]

 団内は、きれいになっていくのに反比例して、 練習兵の事業服は見るも無残に汚れて いきました。  支給されたばかりの純白な服が、汗と泥に まみれ、草の汁が染み付いていました。しかし、 洗濯の方法は、分かりませんでした。  作業の合間や食後の休憩時間も、休む暇が ありませんでした。種々の衣服が支給されており、 それらに名前や兵籍番号を記入し、縫い付けるのも、 ひと仕事でした。針など持ったことのない小淵氏に とって、やっと止めたという程度でした。  海兵団では、一日三度の食事以外何も 食べられず、育ち盛りのこの年齢の少年には、 食事が済むとすぐに空腹が襲ってきました。 次の食事が待ち遠しくなってきます。しかし、 食事で使う食器の取り扱いは、特に厳しい ものでした。  食器はきれいに洗って、消毒所に納め、飯や 汁を運ぶ食函は、烹炊所の所定の棚に納めて おく必要がありました。食事当番の号令で、 食事を取りに烹炊所に行き、棚の食函を引き 出すと、いつもの半分も入っていないことが ありました。  烹炊所に申し出ると、スコップのようなしゃもじで、 中の飯をすくい取って、「これくらいあれば、足りる だろうと」と突き返されました。食函や配膳棚が 汚れていたときなどにやられる罰で、このような ことがないように、気をつける必要がありました。  全員に衣服などの支給品が渡されると、 それまで持っていた私物は、一切郷里に 返送し、時計や万年筆など、持っていても 良いものは、わずかしかありませんでした。  入団式が済むまで、文通も止められて いました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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