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巡洋艦大淀 カッター漕ぎに慣れる [巡洋艦大淀]

 小淵氏ら四教班のカッターが鮮やかに 進んでいると、5月に入団した人達が、 ヨタヨタと近づいてきました。  汗だくで懸命に漕いでいるようでしたが、 オールはバタバタで、返しで水面を 引っ掛けていました。  その脇を、すり抜けていくと、彼らは 漕ぐのをやめて、小淵氏らをうらめし そうに見つめていました。  すると、相手のカッターの教班長が、 「あのカッターは、お前たちより若い 特年兵が漕いでいるのだぞ。」と 気合をかけていました。  湾の中ほどまで行くと、八教班の カッター近づいてきて、「一丁やろう。」と 教班長が競漕を申し込んできました。  それを受けた小淵氏の教班長は、 カッターの脇に漕ぎ進ませ、艇先を 並べました。お互い笑顔でした。  3ヶ月ほど前まで、悲壮極まりない 顔を見合わせていた練習兵同士 でしたが、ここまで変わりました。  スタートの合図に合わせ、短く3回 漕ぎ、そこから常漕を始め、ぐんぐん 漕ぎ出しました。次第に速度が上がり ましたが、差はつきませんでした。  かなり長いこと漕ぎましたが、2艘は 離れず進んでいき、勝負なしの引き分け となりました。これは、教班長同士が、 舵操作で並ぶように操作していたから でした。小淵氏ら漕手は後ろ向きなので 分からなかったということでした。  海兵団教育は、後半になると野外での 陸戦訓練が行われることが多くなって きました。青々と伸びた水稲の中の 細道を通って林や草原に展開し、 匍匐前進をしていると、去年、畑の 草むしりで嫌という程かいだものが、 今では懐かしい故郷の香りとなりました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 新兵入団 [巡洋艦大淀]

 5月になり、第三海兵団に新兵が入団 してきました。練兵場は、黒帽組が一杯に 並んで、徒手訓練が始まっていました。  その中に、小淵氏の村から志願してきた、 小淵氏の2年先輩がいました。軍隊は、1ヶ月 でも早く入団したものが、先輩となるので、 その人は、小淵氏の白い帽子を見て羨まし そうにしていました。  9月になると、大勢の者が入団する ということでした。山奥からも続々とやって 来るかと思うと、小淵氏は、嬉しさがこみ 上げてきました。  風光明媚な武山に初夏の風がさわやかに 吹き渡り、新緑に囲まれた小田和湾は波も なく、穏やかな日が続きました。その中を、 オールさばきもあざやかに漕ぎ出した 13艘のカッターは、思い思いの方角を 目指して進んでいきました。  死ぬほど苦しいと想っていた短艇漕法も、 慣れてしまえば楽しい教練の一つとなって いました。長者ヶ崎の岩陰に向かい四教班の カッターは、休憩しました。個々は、今まで 何度か来て休憩したところでした。  ここにくると、教班長は、キャラメルや グリコを取り出して、分配してくれました。 三粒ずつでしたが、グリコの看板ほどの 元気を教班員に与えてくれました。  その結果か、四教班は、食卓支えの 罰を一度も受けないですんでいました。 この頃になると、他の教班も岩陰につけて のど自慢をやっていました。  一休みした四教班のカッターは、オール さばきも鮮やかに漕ぎ出していきました。 入団から、厳しくしごかれた結果として 手にしているゆとりでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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