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巡洋艦大淀 第二海兵団への行軍 [巡洋艦大淀]

 身体検査ではねられるのかという、不安な 気持ちに耐えながら次々に行われる検査を 受けましたが、結果はその場では発表 されませんでした。  今まで一緒だった同郷のものと別れ、 年少組と思われる一団に回されました。 そこには、小淵氏と同様の体格の者が 数人おり、やれやれと思いました。  しかし、大部分は、体格のよい若者 でした。団内の一隅に集められた 小淵氏たちは、そこで昼食の弁当を もらいました。  経木に包んだ弁当は、開くとこぼれ落ち そうな麦飯でした。うまいまずいもかみわけず 食べ終わると、早々に集合がかけられました。  これから第二回海兵団に行くということで、 下士官に引率されて従いました。市中を通り、 かなり歩きました。  前後左右知らない者ばかりでしたが、ようやく 何やかやと話し始め、だいぶざわつき出しました。 すると、「歩きながら話をしてはいけない。」と 注意されました。  列が乱れてくると、「列を乱してはいけない。」と、 また注意がとんできました。街並みを抜け、道路が 砂利道になり、山を切り開いたようなところに 出ました。  途中、トンネルがあり、どんどん山の中に入って 行きました。晴れ渡った空からは、太陽が容赦なく 照りつけ、汗が滴り落ちていきました。  小淵氏らの列の横を、入団者を満載した トラックが、砂埃を浴びせて行きました。 車上の入団者は、笑いながら走り去って いきました。  2つ目のトンネルを抜けたところで 休憩があり、再び行軍が始まりました。 道路は下り坂になり、人家がちらほら 見えだすと、次第に視界が開けて きました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 海兵団での身体確認 [巡洋艦大淀]

 8月31日の朝が来ました。昼食が済むと、 引率されて海兵団に向かいました。軍関係の 建物が並んでいる中を、物珍しそうに眺め ながら行くと、海兵団の門の所に来ました。  兵舎が立ち並んでいる団内は、見ただけで 厳しい空気に包まれていました。出入り者は、 厳格な態度で門衛に敬礼し、正保で通過して いきました。小淵氏は緊張して団門をくぐりました。  第一海兵団の片隅にある兵舎の端に 集められた入団者は、上半身裸体にされ、 身体検査が行われました。  兵舎の入口から一列になっていると、 一人の准士官が通りかかり、前方から一人、 一人と眺めながら近づいてきました。  検査官ではないようでしたが、その眼は 食いるように見つめていました。やがて 小淵氏の所に来たその人は、立ち止まり 小淵氏の体をじっと見つめていました。  そして、指先で小淵氏の胸をつつき、 「お前さんは病気をしたな。大事な体で 病気などしてはいかんなあ。」と言って きました。  小淵氏は冷水をぶっかけられたように、 強い衝動を受けました。今まで心配していた 「即日帰郷」という忌まわしいことを、反射的に 想像し、目の前が暗くなりました。  しかし、小淵氏は、生まれてから大病を患った ことはなく、もともと色白なので大勢の人と並ぶと、 弱々しく見えるということでした。  今年は、家の仕事が忙しく、水泳などして いなかったため、日焼けしておらず、並んで いる列の中で最も小柄だったので、病気に なったように見えてしまったということでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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