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巡洋艦大淀 最初の仕事 [巡洋艦大淀]

 ぼんやり突っ立ていた小淵氏に、吊床の 中から声がかかりました。小淵氏は緊張して、 「なんでありますか」と返答しました。軍隊の 古参兵かと思っていると、どこから来たのか 尋ねられました。  群馬から来たことを告げると、男は、吊床から 降りてきて、おととい宮城から来たと言って きました。古参兵にしてはおかしいと思い ましたが、気を緩めることはできませんでした。  そこに、下士官が来て、テーブルに投げ 出された帽子を取り、「これはだれのだ。」と 聞いてきました。先程の男が、「僕のです」と 返答すると、「海軍では、私と言いなさい。 それから、支給された物を教卓の上に 投げ出して置かないこと。」と注意しました。  この注意された男は、小淵氏の所属する 班の班長で、鈴木兵曹でした。鈴木班長は、 片側のテーブルにいる者を集め、これから 寝床となる吊床を作ると言い出しました。 そして、丈夫な布と、太い紐、鉄の輪の ついた細い紐を渡してくれました。  反対側でも、一人の教班長が、吊床の 作り方を教え始めていました。説明を聞くと 簡単そうでしたが、たたむのが中々骨が 折れる作業であり、重量が30kg近く あるので、取扱が大変でした。  これが話に聞いた吊床でしたが、 小淵氏の海軍での初仕事となりました。 吊床作りが終わると、作業着や下着が 支給され、それらを入れる衣嚢も渡され、 中に衣類を四角にたたんで納めることなどを 教えられました。  やがて夕食が運ばれ、ホーロー引きの食器に 飯と汁が盛られました。小淵氏より数日早く 入った人達が、手際よく配膳していました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 第二海兵団に到着 [巡洋艦大淀]

 視界が開けてきたものの、かんかん照りの 下の長い行軍だったので、文句を言い出す者が 出てきました。  2時間近く歩いた頃、広々とした所に出ました。 右手遠方に富士山が浮かび、前方には雄大な 海原が広がっていました。  視覚の一隅に海兵団があり、兵舎が何棟も 立ち並んでいました。団内の一角に金網を 張り巡らした所があり、そこで洗濯をしている者が いました。  ここは、周囲の景色のせいか、第一海兵団の ようないかめしい感じはしませんでした。団内は、 小山があり、それを背にして本部の建物が 瀟洒におさまっていました。  前面は芝生の丘で、見事な枝振り松が あちこちに植え込まれていました。ここは、 まだできたての海兵団らしく、建物も 新しいものでした。  建築中の兵舎も何棟か見えましたが、 その辺りは、身の丈より高い雑草が生い 茂っていました。  本部前に集合すると、数名の下士官が来て、 順順位名前を呼び上げました。何組かに分け られると、担当の下士官に従って、兵舎に 案内されました。  「ここが、お前たちが今日から生活する 兵舎だ。」と言われて中に入りました。 兵舎中央は、2m幅くらいの通路で、両側は 縁甲板張りの床でした。  そこに70cm幅で長さ4mくらいのテーブルが 7列、両側で14個並んでいました。テーブル 一つが、一個教班という説明がありました。 小淵氏は、4番目のテーブルに割り 振られました。  そこには白い服を着た黒い帽子をかぶった人が 数人座っていました。案内をした下士官は、この 場所を教えてくれただけで、立ち去ってしまい、 小淵氏は、ぼんやり立っているしかありません でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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