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巡洋艦大淀 5人の教員 [巡洋艦大淀]

 「課業始め5分前。」の号令がかかると、 白い風呂敷に包んだ教科書やノートを 小脇に抱えて整列し、当番兵の指揮で 普通学教室へ駆け足で向かいました。  ある日、小淵氏が、講堂の玄関に近づくと、 仁王立ちしていた福島教員が、「貴様たち。 その態度は何だ。」とたちまち雷が 落下しました。  小淵氏は、駆け足で講堂に向かって いましたが、話しながら駆けていたので、 足並みが乱れ、それを見咎めた教員からの 叱責でした。  「根性を入れ直してこい。」と命じられ、 福島教員の授業中、講堂と兵舎の間を 駆け足で往復させられてしまいました。  二時限目はこの駆け足がきいたのか、 居眠り組が続出しました。居眠りをした ものは、罰直を受けながら、講義を 聞いていました。  多くの者は、居眠り防止のために針を 持っていましたが、それもあまり効果が ありませんでした。普通学教員は、 福島教員を始め、皆教育熱心な 人ばかりでした。  幾何と三角を担当している朝倉教員は、 非常にわかりやすい講義をしてくれました。 物理科学を担当している藤原教員は、 几帳面な人で、黒板に書く字も活字の ようでした。  国語・国文法の榎木教員は、小柄で おとなしい人でした。教員は、5人共 親しみの持てる人で、小淵氏らにとって、 兄のような存在でした。  しかし、種々の点で、かなり厳しい面が ありました。教員は、講義だけでなく、 それ以外の時間も眼を光らせていました。  食事の作法を教えてくれたのも、教員たち でした。教班長に傷のある食器を出したり、 表面の冷えた飯を持ってはいけない。  教班長の服や靴が汚れているのは、その 教班の恥である。と細々としたことまで、 注意してくれました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 総員起こし [巡洋艦大淀]

 教育が一定の区切りとなると、試験が 行われました。  あらゆる教課に試験があるので、それに 追いまくられている練習兵は、寝る時間も 惜しいくらいに勉強しました。みんな懸命に なっていました。体力は、大人に及ばないに しても、一番無理のきく年齢でした。  「総員起こし15分前」、朝の静寂を破って号令が かかりました。この号令で吊床係は起床し、自分の 吊床を格納庫に納め、身支度を調えて総員起こしを 待ちました。この号令でも寝ている者は、ゆり起こし、 総員起こしに備えました。  「総員起こし、総員吊床おさめ。」起床ラッパと 共に、当直教班長の声が響き渡りました。兵舎は 大活躍の場となりました。  括り終わった吊床は、各教班ごとの吊床 格納所に待機している二人の吊床係の ところに運ばれ、素早く格納されました。  終わると大急ぎで、洗面を済ませ、朝礼台の 前に集合し、当直隊長の指揮で皇居遥拝が 行われ、続いて「海行かば」の斉唱と なりました。  それらが済むと朝の体操が始まりました。 海軍体操のベテラン教班長が、台の上に 駆け上がると、純白な列がサッと四方に 散開してリズミカルな躍動が続きました。  体操が済むと、駆け足で兵舎に戻り、朝の 掃除、朝食となります。兵の早食いとよく 言われる通り、団長からはよく咀嚼するように 通達されていましたが、忙しい日課が 控えており、実行できませんでした。  朝食を終えると午前中行われる普通学 教科書を揃え、身辺を整理して「課業始め」に 備えます。ここから教室に行くまでも気を 抜くことができませんでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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