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巡洋艦大淀 瑞鶴、秋月沈没 [巡洋艦大淀]

 この頃、瑞鶴は、巨大な鉄塊となって 燃え盛っていましたが、ついに命脈つきて 没し、秋月も大淀の眼前で、巨大な水柱に 包まれたと見る間に轟沈してしまいました。  瑞鳳、千代田、千歳などは、どうなったのか、 他の艦はどうなったのかすっかり陣形も 乱れてしまった小沢艦隊は、それぞれの 艦の末路を見届けることは、大淀1艦では 不可能でした。  間もなく第5波が来襲するだろうと考えて いたころ、分散していた個々に戦っていた 伊勢、日向、五十鈴、若月、初月、霜月、 槇などが、集結しはじめました。いずれも 傷ついていない艦はありませんでした。  伊勢は、至近弾で各所を破られ、 日向は、後甲板に直撃を受けている ようでした。五十鈴もかなりの損傷でした。  しかし、あくまで敵機を引きつけるのが 作戦の目的である以上、この海域からの 離脱は許されませんでした。  「敵機来襲。約30機」、対空戦闘のラッパが 5たび高らかに鳴り渡りました。しかし、この数で あれば、大淀の敵ではありませんでした。大淀に 向かってきた敵機は、あわれでした。  主砲の撃墜を免れても、高角砲によってさらに 接近すれば、機銃で必ず血祭りにされる運命 でした。大淀の15.5cm主砲6門と、10cm 長砲高角砲8門は、絶妙の装備配列でした。 この配列のため、大淀は、どの艦にも見られない 防空能力を有していました。  大淀は、それに加えて高度の運動能力があり、 思うがままの対空戦闘を続けることができました。 この第5波も、30分ほどで終わり、砲撃止めが 号令されると、早速甲板の片付けに行きました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 主砲分隊最初の犠牲者 [巡洋艦大淀]

 第四波も空一面に分散して襲撃してくる 敵機を、大淀の対空砲火は、一糸乱れず 日頃の訓練通りに捕捉して、砲撃を 浴びせました。  至近弾の破片や、敵機の銃撃で負傷者は あったものの、大淀は、かすり傷一つ受けて いませんでした。  この頃から、戦闘にもあぶらが乗ってきたと 言える状態でした。大淀は、全く冷静に、 この戦闘を切り抜けようとしていました。  トップから敵機退散の報告がありました。 当然、すぐに砲撃止めが号令されるだろうと 思っていました。  しかし、号令官が、「こちら発令所」と、何度も 叫んでいましたが、血の引いた顔で、「トップの 様子が変です。」と、報告してきました。  「何かあったのか」と呼びかけていると、 トップの伝令から、伝令と射撃盤旋回手が 負傷したと報告がありました。  さらに方位盤手の戦死が伝えられました。 小淵氏は、敵機退散中にどうしたのだと、 頭を捻りました。  後にわかったことですが、これは、敵機では なく味方の25mm機銃の流れ弾が、射撃 指揮所に飛び込んだということでした。  遺体は、居住区に安置され、遺髪の 代わりに、眉毛と立派なひげを 遺髪代わりにしました。  味方の25mm機銃による戦死というなんとも 無情なと、悔やまれること仕切でした。それが、 主要配置である射撃指揮所に飛び込んだ というのは、不運な出来事でした。  今まで戦死者を出していなかった主砲 分隊は、最初の犠牲者を出してしまい ました。小淵氏は、事実を知って呆然と する思いでした。戦死者とけが人の配置は 別の人がつき、戦闘は続けられました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 ますます勇猛 [巡洋艦大淀]

 大淀は、連合艦隊旗艦だったので、 長官室、参謀室、作戦室などの各室に 不自由はありませんでした。艦隊の 旗艦としての機能は十分に備えて いました。  大淀は、全く落ち着いた応戦ぶりで、 「訓練は、戦闘と思え。戦闘は訓練と 思って臨め。」と、つねづね言われて いたように、自信を持って戦いました。  小沢中将は、「第三回目の襲撃は大した ことがなかった。」と語っておられましたが、 大淀が、危なげなく戦ったことによる結果 でした。小淵氏らは、戦闘を何度も経験し、 気軽な状態で戦うことができました。  生きながらえようと思えば、あらゆることが 恐怖となりますが、自己を滅した時、そこに 残されているのは、楽観でした。戦場での 個人感情は、解し難いですが、敵が強力で あればあるほど、勇猛心が奮い立ちました。  大淀の乗員は、時が経つに従って、ます ます勇猛に戦いました。これは、小沢長官の 艦隊乗員全てに言えることでした。大淀から、 瑞鶴の若い士官が、探検で刺し違えて 果てたのや、消火のために火中に身を 投じる兵士を見ていました。  戦闘配置で昼食を済ませた小淵氏は、 交替で上甲板に上がって、休憩しました。 しかし、それもつかの間で、小淵氏が 上甲板に出た直後、第四波の来襲が 告げられました。  「またおいでなすった」と、すぐに 戦闘配置に駆け込みました。「来襲 敵機40機」と告げられ、これなら大淀 1隻でも十分に引き受けて戦えると 感じていました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 第三波の敵機来襲 [巡洋艦大淀]

 第三波の来襲敵機は、約40機と報告 されました。大した数ではありませんが、 敵の誇る攻撃機アベンジャーが、主力と なって、新手が次々と来襲してきました。  艦隊の旗艦となった大淀は、最後まで 沈むわけにはいかないぞという自覚が あり、対空戦闘は見事の一言につきました。 この分なら、弾丸がつきない限り大丈夫だと 思えました。  第三話の波は、地獄の三丁目くらい までで、敵機も近づく前に主砲や 高角砲の餌食になっていました。 この襲撃も35分くらいで終わりました。  砲撃や眼の号令の少し前、烹炊所から 握り飯が届きました。早速各自に配給され、 みんな夢中でぱくつきました。しかし、 一人に二個ずつでしたので、物足りない 感じでした。  小淵氏は、お茶を飲みながら、乾パンを かじりました。すると、そこに主計長が来て、 員数を間違えたということで、二度目の 握り飯が届きました。塩がついているだけの 握り飯に、福神漬のおかずでしたが、 腹一杯つめこみました。  そこへ、主計兵曹が、握り飯をもって 来ました。艦底にある配置なので、 烹炊所員もまごついているようでした。  そんな時、小沢長官の従者を出す ようにという命令が来ました。小淵氏の ニ分隊からは、艦長の従者も出して いるので、二人で一緒に出ていきました。  号令官は、長官と艦長に従者を 出しているので、この作戦の様子が なんでも分かると喜んでいました。  この後、二人は種々の情報を持ち 帰りましたが、味方の遊撃部隊の 状況は、全く不明でした。  長官や艦長は、作戦室にこもって、 会議をしていましたが、従兵は 入れませんでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 戦場は非情 [巡洋艦大淀]

 ボートがあと150mくらいまで 近づいてきた時、「敵機来襲」が 通報されました。  「配置につけ」「対空戦闘」のラッパが 立て続けに鳴り渡りました。甲板上では、 ボート吊り上げが準備されていましたが、 ボートはかなり離れていました。  その時、一人の搭乗員が、舷側にたどり 着きました。ロープを投げ入れましたが、 「助かった」と一言残し、海中に沈んで しまいました。  引き上げるロープに手応えがありません でした。救助される前に、体力も気力も 尽き果ててしまったようでした。  甲板上の声援も途絶えた頃、やっと長官を 乗せたボートが舷側につきました。大淀の スクリューは、波をかき立て始めました。  そして、ボートを吊り上げるフックが かけられると同時に、艦は滑るように 動き出しました。  この時、二人の搭乗員が泳ぎ着きました。 すぐにロープが投げ入れられましたが、それも 届かず、スクリューの波にかき消されてしまい ました。戦場は非情でした。  小淵氏らは、満身の力を込めて、ボートが つないであるロープを引きました。甲板上に 吊り上げられたボートから、小沢中将が、 沈痛な面持ちで現れ、身をこごめるようにして、 艦内に消えていきました。  長官に同行した幕僚は、10名くらいで、 その人達が降りるのももどかしく、ボートを 固定した小淵氏らは、一斉に各自の 戦闘配置に走りました。  主砲発令所はすっかり準備が整っており、 小淵氏の配置である射撃盤は、上水が 追尾していました。  早速交代して席につきました。それから間もなく して、「砲撃はじめ」が下命されました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 無情 [巡洋艦大淀]

 搭乗員の救助を待っていたボートに、 大淀副長が、たまりかねて、「そんな事に かまわないで、長官を迎えにいけ。」と メガホンで怒鳴りました。しかし、ボートには 聞こえていないようでした。  メガホンを持った兵曹が、副長に替わり、 「急いで長官を迎えにいけ。そんな所で グズグズしていないで、はやく長官を 迎えに行くんだ。急いで行け。」と 怒鳴りました。  二番目の搭乗員は、6mくらいでボートに つきそうでしたが、再び漕ぎ始め、離れて いきました。艇に敷いてあるスノコ板などが、 投げ入れられました。その後、浮きそうな ものを、手当り次第に投げ込んでいました。  小淵氏は、この光景に一瞬無情を感じ ましたが、ボートを降ろした目的からすれば、 副長の叱責は当然と言えました。そこで、 小淵氏らは、大淀に泳いでくるように、 大声で呼びかけました。  しかし、大淀まで300mほどありそうな ためか、大淀に向かってきたのは一人 だけで、その他は、ボート目掛けて、 夢中で泳いでいるようで、小淵氏らの 声に気づいていないようでした。  兵曹が再びメガホンを持って、泳いでいる 搭乗員に、「本艦に泳いでこい。急いで こっちにこい。」と怒鳴りました。  搭乗員たちは、大淀に向けて泳ぎ 出しましたが、遅々としてして いました。  大淀のボートは、長官を乗せて、 大淀に向かっていました。ボートと 搭乗員、どちらが先に大淀に着くか という状況でした。  小淵氏らは、どちらもはやく 着いてくれと、見守るばかり でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 母艦のない直掩機の運命 [巡洋艦大淀]

 小淵氏が瑞鶴を見ていた時、突如、味方の 直掩機がボート目掛けて降下してきました。  ハッとした瞬間、尾部を水面に着けて50mほど 滑走して、停止しました。見る間に機体は沈み始め、 搭乗員が機外に脱出して泳ぎだしました。  着水したのは冷戦でした。停止する直前、 焼けたエンジンが海水につかって爆発したのか、 鈍い音がしたと同時に、機体は沈んでしまいました。  小淵氏は、飛行機がこれほどはやく沈むとは、 知りませんでした。小淵氏は、過去に一式陸攻が、 着水しても沈まなかったのを見ていたので、 意外でした。  続いて、もう一機同じように着水し、エンジンが 爆発すると同時に、搭乗員が脱出して泳ぎだし ました。そして、また一機とボート目掛けて、 直掩機は次々と着水しました。  最後に着水したのは、二人乗りの大型機でした。 その機の搭乗員は、翼の上になにか投げ出したと 思ったら、空気を入れて膨らませていました。 救命袋のようで、これが膨らんだ頃、航空機は 沈んでいきました。  小淵氏は、この意外な光景を判断しかねて いました。着艦できる母艦のない直掩機は、 燃料がつきてしまったということでした。  最初の搭乗員は、すでにボート近くまで 泳ぎ着いたので、漕手は、漕ぐのをやめ、 救助しました。そして、二番目の搭乗員が 泳ぎ着くのを待っていました。  次々に起きた不測の事態に、ボートは、 任務を忘れてしまったかのようでした。 小淵氏も同じ気持ちで、泳いでいる搭乗員が はやくボートに着くように祈る思い出した。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 鬼神の化身 [巡洋艦大淀]

 「旗艦移転準備、関係分隊は至急かかれ。」 と、スピーカーから命令が伝達されました。  発令所のボート部員は、鉢巻姿も勇ましく 整列し、舷外にふり出された短艇に素早く 乗り込みました。艇の指揮は、甲板士官が つきました。  ボートは降ろされ、海面に着水すると、 瑞鶴に艇首を向けて勇ましく漕ぎ出しました。 大淀乗員の中から選ばれている体力抜群の 人達の漕ぐボートは、見る間に遠ざかって いきました。  また敵機の襲撃があるかも知れない 状態のもとでの、旗艦移転作業でした。 第一波と第二波の合間は、30分くらい ありましたが、今度も同じとは限りません でした。  穏やかそうに見えた波も、小さなボートには、 かなりの波でした。うねりに乗り上げたり、落ち 込んだりしながら、ボートは、懸命に漕ぎ進んで いきました。  瑞鶴は、航行不能なのか、旗艦移転のために 停止しているのか傾いて、各所から猛烈な 黒煙を吹き出していました。大きく傾斜した 瑞鶴の飛行甲板には、各所に直撃弾の 大穴があき、煙突の黒煙が吹き出している ようでした。  舷側の回廊からも炎と黒煙が吹き出し、 巨大な艦隊の内部は猛火が荒れ狂って いました。その煙と炎の中で、懸命の 消火作業をしている乗組員の姿は、 鬼神の化身を見る思いでした。  旗艦瑞鶴には、すでにZ旗も長官旗も 見えませんでした。爆風で飛び散ったのか、 降ろしたのかは、小淵氏には判断が できませんでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 第二波を切り抜ける [巡洋艦大淀]

 小淵氏は、今回の襲撃では、航空魚雷は あまり使用されておらず、爆弾も、至近弾では 被害が出ない60kgくらいの爆弾だと考えて いました。  しかし、魚雷は命中しない限り、小淵氏の いる発令所では、どこに投下されたのかは 分かりませんでした。  実際は、大淀の名航海長内田中佐の 操艦で、全弾回避しているから、小淵氏は 気づかなかったということです。  雷撃機については、接近しすぎたため、 魚雷が船底を通り抜けるという幸運も ありました。  この戦闘で、艦長は、防空指揮所に 陣取って艦全体の指揮をとっていました。 砲術長は、射撃指揮所で頑張っていました。  群がり襲う敵機は、砲煙をかいくぐり、 大淀に殺到して爆弾を投下しますが、 かわしていました。  敵機の爆弾は、左に交わす大淀に、 海水のみを浴びせるだけに終わって いました。  大淀の対空砲火は、持ち前の実力を 発揮して大活躍を見せていました。突入 してくる敵機には、主砲・高角砲・機銃が、 完全に捕捉し、撃墜していました。  第二波の襲撃は、かなり長いこと続きました。 「はやく小沢長官を迎えに行かなければ」と 思っていました。その時、機銃の発射音が 止まりました。続いて高角砲も咆哮をやめ、 主砲は、「目標替え」が命令されました。  新たな目標は、遠ざかる敵機でした。射撃盤の 上曹は、「休憩」と小さな声で言いました。すると、 「砲撃止め」の号令が届きました。みな、一斉に 顔をあげ、深呼吸しました。  第二波は、第一波より少し長く40分ほどでした。 これも無事に切り抜けられ、ガヤガヤと話し 始めました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 ちょうど地獄の1丁目 [巡洋艦大淀]

 再び、大淀艦内は、ものすごい轟音に 包まれました。それは、艦自体の雄叫びで あり、乗員全員の激烈な闘魂の昇華音 でした。  来襲した敵機も、今度は数が多いので、 かなり激しく襲いかかってきました。時折、 至近弾のため、1万tを超える大淀の 船体も上下に激しく震動しました。  そのたびに、外部の様子がわからない 発令所では、緊張することになりますが、 「いまのは至近弾」という説明が、 加えられました。  外部の様子がわからない発令所に気を 使って、砲術長が知らせてくれたり、トップ 伝令が自発的に教えてくれたりするので、 至近弾の振動にも慣れてしまった発令所 では、勘で判断できるようになっていました。  艦が傾いたりすると、「今のは右舷50mの 至近弾」と、眼の前で見ているようにい出す者が いました。すると、「ちょうど地獄の3丁目」と、 伝令の声色よろしく、兵曹が言うと、発令所に 爆笑がわきました。しかし、すぐに冷静に 各自の任務は続けられました。  この時、大淀は、今までになく激しい震動に 見舞われ、座っていた小淵氏も投げ出される ようによろめきました。艦は、急に傾き始め、 潮鳴りとスクリューの音響が不気味に 伝わってきました。  その時、「いまのは地獄の一丁目」と、例の 調子で兵曹がやったので、苦笑しながら座り 直すと、「今のは左舷20mの至近弾」という 伝令が伝えられました。  戦闘訓練では、このような冗談は許されず、 「真面目にやれ」と怒鳴られていました。 小淵氏は、大型爆弾でなくて、良かったと 思いました。大型爆弾なら、外装の薄い 大淀は、至近弾でも艦腹を破られて いました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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