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巡洋艦大淀 主砲発令所の中 [巡洋艦大淀]

 この頃、小沢中将は、敵の機動部隊を 引きつけたことを確信しており、本体より 南下していた戦艦伊勢と日向を指揮 していた松田支隊に対して、本体に 合流するように命じていました。  松田支隊は、水平線上に敵空母が 探照灯を照射しながら、飛行機を収容 しているのを発見しました。  電探にも敵機の映像を認めていたので、 これを攻撃すべく進撃していましたが、 敵空母は見えなくなったということでした。  小沢中将は、敵機動部隊をさらに 引きつけるべく、北方に移動しました。 これは、敵機を自分の艦隊に引きつける ための北上なので、低速での移動でした。  このような事情を全く知らない小淵氏ら、 大淀主砲発令所内の乗員は、勝手なことを 話していました。  「全軍突撃ということは、全部沈むまで 戦えということだな。」「沈むにしても、弾丸が あるうちは、決して沈めないぞ。」と、威勢の いいことを言っていました。  今回は、カビエンの時の経験から、 弾薬類は、規定量よりだいぶ多く 積み込んでいました。  「小沢中将は、気が気でないだろう。」と 心配そうにつぶやくと、「こうなれば、どの 艦に乗っていても同じことさ。どうせ皆 沈むから」と悟りきったように言いました。  「丁型なら小さいから爆弾もめったに 当たらないぞ。」「それでは内火艇か短艇に 乗っていた方がいいだろう。」「内火艇では 内地に帰れない。」「どこかの島に流れ着いて 王様になって暮せばいい。」と言った話に 発展し、腹を抱えて大笑いしました。  主砲発令所の中は、陽気なものでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 司令部の伝令 [巡洋艦大淀]

 夜もだいぶ更けた頃、「大いなる戦果の ために、小なる犠牲は顧みず、天佑を 確信し、全軍突撃せよ。」と、連合艦隊 司令部からの伝令を、艦内スピーカーで 伝えてきました。  この経緯を、兵長に確認すると、「搭載機 による攻撃が不調に終わったので、この際、 空母は温存すべく、引き上げるべきだ。」 という意見具申の電報を、小沢中将が、 司令部に打電した。  すると、司令部からは、天佑を確信し、 全軍突撃せよ。の返電があったので、 小沢中将は、怒って我帰らずとすぐに 電報を打たせた。」と、いうことでした。  しかし、真相は、栗田艦隊が敵機の 猛襲を受け反転した(一度目の反転で、 この後再突入しています)ことを知った 小沢中将が、激怒して意見具申の 電報を打たせたということでした。  小淵氏は、栗田艦隊の反転、再突入を 知りませんし、西村艦隊がスリガオ海峡に 迫っていたことも、分かりませんでした。  小澤艦隊が、囮となっていることも 予想できず、敵機動部隊と刺し違える 覚悟だったということも、夢想だに しませんでした。  しかし、連合艦隊司令部の伝令から、 漠然とではあったものの、犠牲の意味を 悟っていました。司令部の伝令は、反転 退避した栗田艦隊に対して出されたもの ですが、小淵氏らは、自分たちの艦隊に 出されたものと考えました。  搭載機を積まない空母が、どこに突撃 するのかと考えました。空母だけでも 帰した方がいいのではないかと、推測 していました。  いずれにせよ、明日が決戦日だということは 全乗員が認識しました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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