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巡洋艦大淀 決戦の日 [巡洋艦大淀]

 夜は静かに更けていきました。やがて、 第一戦闘配備になったので、発令所員は、 交代で居住区に行き、着替えをしました。  各自は、きれいに洗濯した下着や、 取っておきの新品を身に着けました。 この時、体を清めるための真水が、 配給されました。  身支度が済むと、全員発令所に集合し、 今夜の当直の順番や見張りの割当などが、 決められました。  小淵氏は、発令所当直を、割り当て られました。そうこうするうちに、夜も だいぶ更けてきたので、非番の者は、 待機所で眠りにつきました。  小淵氏も非番になり、待機所のシートに 横になると、すぐに寝込んでしまいました。  1944年10月24日、ついに決戦の朝が 来ました。待機所で早めの朝食を済ませ、 食事の後片付けをした小淵氏は、食函を 烹炊所に納めにいきました。  帰りに上甲板に出ると、空は晴れて 澄み切った青空が、眩しく輝いていました。 洋上はうねりがあるものの、比較的穏やか でした。  当直の時間となり、発令所に行くと 皆集まって何か話し合いをしていました。 小淵氏が入っていくと、「眼がいいから、 見張りの当直にいけ。」と言われました。 小淵氏の視力は2.0でしたので、遠目が ききました。  今は第一配備なので、航海科の正規 見張員が当直に立っていますが、 ゆとりがある配置から、応援を 出す事になっていました。  いざという時のために、正規の見張員 には、十分に休息してもらう必要が ありました。  見張所にあがると、空母の甲板に 飛行機がずらりと並んでいるのが 見えました。爆弾や魚雷を装着 していました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 明日決戦 [巡洋艦大淀]

 風上に向けたカタパルトから、バシューと 射出音を残して、水偵は発進しました。  そして、艦隊上空を二度旋回し、西南の 方向に飛び去りました。洋上のうねりも、 だいぶおさまり、このぶんなら曳航補給も できそうでしたが、その命令は出ません でした。  小淵氏は、この機動部隊はどこを進んで いるのかが気になりました。レイテ島を 目指している以上、フィリピン近くに 来ていることは確かで、世界一深いと 言われるフィリピン海溝が横たわって いるはずでした。  実際、この辺りの海はかなり深いらしく、 濃紺の暗い感じがしました。やがて、夕日が 燃えながら沈みかけた頃、水偵が帰って きました。大淀は、速力をあげて輪形陣から 離脱し、停止しました。  水偵は、大淀の左舷に着水し、吊り 上げられて、カタパルトに降ろされました。 大淀は、艦尾に激しく潮を掻き立てながら、 輪形陣に戻りました。水偵を結束し終わる頃 には、夕闇が艦隊を包み始めました。何事も なく暮れた一日でした。  定時の夕食を済ませてくつろいでいると、 「配置に付け」の号令がありました。けたたま しいラパは、鳴りませんでしたので、何事かと 思いましたが、艦長の訓示でした。  艦長から、「明日決戦の見込み。緊褌一番、 各自その任を期せ。今、連合艦隊の艨艟は、 レイテの敵を撃滅すべく、一斉に進撃中である。」 ということでした。  小淵氏は、全身に熱い血潮のたぎるのを感じ、 「連合艦隊の全艦艇がことごとく撃って出たのだ。 この戦さは、何としても勝たなければならないと。」 考えました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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