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巡洋艦大淀 敵を欺くには、味方を欺け [巡洋艦大淀]

 敵機動部隊発見の無電を傍受した という話には、続きがありました。  これは、先程発見した二式大艇が、 小沢中将の艦隊を、敵機動部隊と誤認 して、無電で通報しているのを、大淀の 通信員が傍受して、艦内に知らせた ということでした。  小淵氏は、先程の二式大艇は 逃げるように姿を消していましたが、 大慌てで逃げ出していたのだと、 改めて分かりました。この話に、 艦内では、大笑いしました。  小淵氏らの肉眼でも、二式大艇だと いうことははっきり確認できたほどで したので、伊勢や日向が日本艦隊の 軍艦であることは、艦型を少し注意深く 見れば、分かるはずなのにと、考えました。  滑稽な話でしたが、「敵を欺くには、 味方を欺け」の兵法の言うように、これは 幸先の良いことかもしれないと考えました。  やがて、洋上が闇につつまれた頃、 第一戦闘配備が下命され、敵潜水艦に 対する警戒を厳重にするように、通達 されました。「戦場近し」として、各艦は 万全の配備を敷いて航行しました。  翌日も洋上は荒れていました。しかし、 小淵氏は、いくら艦が揺れようが、船酔いは しなくなっていました。むしろこれくらいで あれば、爽快なくらいでした。  この時、敵の艦隊が、ルソン島の東岸 まで北上し、激しい艦砲射撃を続行中だと いう無電が傍受され、そのことを艦内スピーカーで 知らせてくれました。決戦場に近づいた 緊張感が、いよいよ身心をひきしめる 感じでした。  やがて、太陽が傾き始めた頃、「本艦は、 索敵のために水偵を発進する。」と通報 されました。小淵氏は、この時非番でしたが、 このような作業は、全部手伝う必要が ありました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 曳航補給 [巡洋艦大淀]

 昼食を済ませ、30分くらい過ぎた頃、 曳航補給用意の命令が出ました。これは、 航続距離が短い丁型駆逐艦に重油を 補給する作業でした。  停止しての補給は、敵潜水艦に 狙われるので、航行しながらの 補給となりました。大淀の左舷に、 補給する駆逐艦桐が接近して きました。  桐に、何度かロープを投げかけましたが、 なかなか届きませんでした。大淀は、あまり 揺れませんでしたが、桐は、木の葉のように 翻弄されていて、近づくこともできません でした。  桐の艦上から、舫銃による細いロープが 撃ち込まれ、やっと連絡をとることができ ました。それをもとにして、順次太い ロープがつながれ、送油管が 引き出されました。  それがようやく桐の甲板上に引き上げ られた時に、大きなうねりが来て、桐は押し 離されてしまいました。再び、送油管を 引き上げると、また押し流され、あるいは 艦尾スレスレに迫ってきて、今にも 激突しかねない有様でした。  桐の艦上では、必死になって、送油管を つなぐ努力をしていましたが、うねりのため、 つなぐことはできませんでした。こうした 努力も虚しく、曳航補給はついに 中止されました。  やむなく、艦隊は、輪形陣に戻し、さらに 南下していきました。機動部隊を、夕日は 赤々と照らしていました。この頃になると、 気温もぐっと上昇し、真夏を感じさせる までになっていました。  やがて、夕食になろうとしたころ、 「敵機動部隊発見」という無電を、 傍受したとの話が伝えられました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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