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巡洋艦大淀 サイパン島に到着 [巡洋艦大淀]

 航行4日目、艦内は冷房に切り替わりました。 南海の青空が、広がっていました。遠くに サイパン島が見えてきました。海も穏やかな エメラルドブルーでした。  始めて見るサイパン島は、平坦な女性的な 感じのする島でした。小高い丘がうねうねと続き、 ヤシの木等はあまりありませんでした。丘は、 全て砂糖黍の畑になっていました。  入港用意のラッパが鳴り響きました。「大淀が 来たぞ」と、呼びかけている感じでしたが、 島からの反応はなく、静かなものでした。 大淀は、しずしずと湾内に入っていきました。  湾内は、小さな入り江で、大淀が入ると、 他の艦は、入れないような所でした。水深を 測りながら、進んでいく右手の岸壁におかしな 船が2隻停泊していました。1隻は、工作艦明石 でした。もう1隻は不明でした。  大淀は、港内に仮泊すると、ただちに物資の 揚陸準備をはじめました。カビエンの時のような 事があるかもしれず、主要配置には、ベテランを つかせての警戒でした。  やがて、艦の周りに物資引取の小型艇が 集まり、忙しい陸揚げ作業が、開始されました。 いつ敵が襲撃してくるか分からないので、 懸命の作業でした。雪の降りしきる中で、 搭載された物資を、4日後に、酷暑の サイパン島で陸揚げされたことになります。  近くの飛行場から、一式陸攻が、次々に 飛び立ち始め、その爆音で、島全体が急に 緊迫した空気に包まれました。噂で、この 近くにあるブラウン島方面に敵が進攻し、 上陸を開始しているということでした。  一式陸攻は、そこに集結している敵艦隊の 攻撃に向かうということでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 一次室従兵 [巡洋艦大淀]

 日没になり、探照灯が照射され、作業が 続けられました。夕食も交代で済ませての 搭載作業でした。  かなり多種多様の戦略物資が、格納庫や 甲板上に積み込まれました。小物は、 居住区内を占領しました。  これだけの物資を満載した大淀は、 重巡洋艦並みの排水量になっている だろうと想像できました。甲板上の物資は、 覆いがかけられ、厳重に結束されました。  照射していた探照灯も消され、静かに なった甲板上に雪が降っていました。  2月24日午前3時、艦内スピーカーから、 「出撃用意」のラッパが鳴り響きました。雪は 小降りになっていましたが、まだ降り続いて いました。  港内は、どこにも灯火が見えず、暗夜の 出撃でした。大淀は、風雲急を告げる サイパン島を目指して、一路南下しました。  小淵氏は、サイパン出撃前日に、一次室 従兵の役が割り当てられました。大尉以上が 「士官室」、候補生と少中尉が「第一次室」、 准士官と特務小中尉が「二次室」というように、 別れていました。  従兵は、各分隊から選出され、適宜交代して いました。各室とも、二等兵曹の従兵長がおり、 その下に、次長、従兵5、6名という人員構成 でした。  従兵は、士官の食事の用意と、担当士官の 身の回りの世話をするのが主な仕事で、各種の 当直や艦内整備作業、及び、兵器の手入れなどは、 免除されていました。戦略物資や弾薬の搭載は、 出なければなりませんでした。  碇泊中の従兵は、みんなに羨ましがられますが、 航海中は、呑気に眠っている仲間が羨ましくなる 部署でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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