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巡洋艦大淀 母艦のない直掩機の運命 [巡洋艦大淀]

 小淵氏が瑞鶴を見ていた時、突如、味方の 直掩機がボート目掛けて降下してきました。  ハッとした瞬間、尾部を水面に着けて50mほど 滑走して、停止しました。見る間に機体は沈み始め、 搭乗員が機外に脱出して泳ぎだしました。  着水したのは冷戦でした。停止する直前、 焼けたエンジンが海水につかって爆発したのか、 鈍い音がしたと同時に、機体は沈んでしまいました。  小淵氏は、飛行機がこれほどはやく沈むとは、 知りませんでした。小淵氏は、過去に一式陸攻が、 着水しても沈まなかったのを見ていたので、 意外でした。  続いて、もう一機同じように着水し、エンジンが 爆発すると同時に、搭乗員が脱出して泳ぎだし ました。そして、また一機とボート目掛けて、 直掩機は次々と着水しました。  最後に着水したのは、二人乗りの大型機でした。 その機の搭乗員は、翼の上になにか投げ出したと 思ったら、空気を入れて膨らませていました。 救命袋のようで、これが膨らんだ頃、航空機は 沈んでいきました。  小淵氏は、この意外な光景を判断しかねて いました。着艦できる母艦のない直掩機は、 燃料がつきてしまったということでした。  最初の搭乗員は、すでにボート近くまで 泳ぎ着いたので、漕手は、漕ぐのをやめ、 救助しました。そして、二番目の搭乗員が 泳ぎ着くのを待っていました。  次々に起きた不測の事態に、ボートは、 任務を忘れてしまったかのようでした。 小淵氏も同じ気持ちで、泳いでいる搭乗員が はやくボートに着くように祈る思い出した。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 鬼神の化身 [巡洋艦大淀]

 「旗艦移転準備、関係分隊は至急かかれ。」 と、スピーカーから命令が伝達されました。  発令所のボート部員は、鉢巻姿も勇ましく 整列し、舷外にふり出された短艇に素早く 乗り込みました。艇の指揮は、甲板士官が つきました。  ボートは降ろされ、海面に着水すると、 瑞鶴に艇首を向けて勇ましく漕ぎ出しました。 大淀乗員の中から選ばれている体力抜群の 人達の漕ぐボートは、見る間に遠ざかって いきました。  また敵機の襲撃があるかも知れない 状態のもとでの、旗艦移転作業でした。 第一波と第二波の合間は、30分くらい ありましたが、今度も同じとは限りません でした。  穏やかそうに見えた波も、小さなボートには、 かなりの波でした。うねりに乗り上げたり、落ち 込んだりしながら、ボートは、懸命に漕ぎ進んで いきました。  瑞鶴は、航行不能なのか、旗艦移転のために 停止しているのか傾いて、各所から猛烈な 黒煙を吹き出していました。大きく傾斜した 瑞鶴の飛行甲板には、各所に直撃弾の 大穴があき、煙突の黒煙が吹き出している ようでした。  舷側の回廊からも炎と黒煙が吹き出し、 巨大な艦隊の内部は猛火が荒れ狂って いました。その煙と炎の中で、懸命の 消火作業をしている乗組員の姿は、 鬼神の化身を見る思いでした。  旗艦瑞鶴には、すでにZ旗も長官旗も 見えませんでした。爆風で飛び散ったのか、 降ろしたのかは、小淵氏には判断が できませんでした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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