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巡洋艦大淀 一大作戦の発動 [巡洋艦大淀]

 横須賀には、大淀の他には、出港を 急いでいる信濃の他には、山城がいる だけでした。時折、駆逐艦の出入りが あるくらいでした。  連合艦隊の司令部が降りると、「いよいよ 大淀も出撃することになるぞ。」と、みんな 張り切っていました。旗艦勤務は、乗組員 誰もがうんざりしていました。  「内地にいながら上陸もできないなんて、 馬鹿馬鹿しい。はやく戦場に出て、バカスカ やりたいもんだ。その方が、清々する。」 というのが正直な感想でした。  暑さも影を潜め、秋風が港内を吹き渡る ようになってきました。快晴の空には、新鋭機の 銀河が飛び立って爆撃訓練を行っていました。 投下された爆弾が、水上をニ、三度と、 飛び跳ねていました。  10月初旬、「一大作戦の発動」が、艦内で 囁かれていました。出撃の噂が立ってから 久しくなっていました。待ち焦がれた出撃 準備がようやくにして下命されました。 乗組員の意気は、天を衝きました。  「血湧き肉躍る」思いを胸に秘めて、素早く 出撃準備を完了した乗組員に、総員集合が かかりました。段状に上がった牟田口艦長は、 このたびの決戦が、容易ならざるもので あることを語りはじめました。  「わが帝国海軍が、国家の存亡を賭しての 決戦の秋が来た。敵の反攻が、日増しに激化 するこの時、連合艦隊は総力を結集し、一挙に 仇敵を撃滅すべく、全艦ことごとく撃ってでる。 これから本艦もその集結地に向かう。  今日から諸君の命は、この艦長が預かる。 諸君は、今までの訓練の成果や実戦での 体験を、この度の戦闘に遺憾なく発揮して もらいたい。」  艦長の訓示は続きました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 空母信濃 [巡洋艦大淀]

 空母信濃が、ドックから出て、艤装が 急がれていました。小淵氏は、空母信濃は、 怪物としか言いようのない威容だと しています。  ものすごい数の高角砲や、機銃などが 舷側にずらりと装備され、艦橋も今までの 空母に見られない巨大なものでした。  信濃は、早速戦闘訓練が行われているらしく、 舷側に装備された多数の高角砲は、仮想敵を 追って、盛んに動いていました。  これを見て大淀の乗員は、「信濃の兵隊さん。 早速しぼられているな。大いに頑張って早く 仲間入りしてくださいよ。」と、ささやきあって いました。  しかし、小淵氏は、信濃が進水する時に、 事故で艦首と艦尾を損傷したことを、不吉な 事故だと感じていました。小淵氏は、この事故で、 信濃はもろくなっていたのではないかといています。  それは、のちの同郷の信濃乗組員から、2本の 魚雷で沈没したと聞いたからでした。魚雷が 当たった時、鋲がバラバラに吹っ飛んで急激な 浸水をしたということでした。  大和、武蔵につぐ3番艦として計画された信濃の 鋲がそこまで脆弱というは考えられませんでした。 信濃は、魚雷による浸水復元のため、注水したところ、 しすぎて反対側に横転したということでした。  阿部艦長は、信濃と運命をともにしています。 (追記)  信濃の撃沈は、信濃と護衛駆逐艦の意思疎通が できていなかったことが、最大の問題と言えます。 歴戦の護衛駆逐艦艦長の反対を押し切って、 夜間移動を強行した阿部艦長にも否があリます。  さらに、信濃の護衛に駆逐艦3隻(しかもレイテ沖 海戦から帰還直後の疲労している状態)しかつけて いない司令部にも、問題がありました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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