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巡洋艦大淀 帰還祝い [巡洋艦大淀]

 小淵氏らは、士官の帰還祝いのために、 方々から料理を運んだり、食器を借りてきたり して、用意を整えました。やがて、艦長以下、 非番の士官が続々とやってきました。  全員が席に着くと、副長の音頭で乾杯が 行われ、その後は、「従兵、酒が足りないぞ。」と、 たちまちの催促がありました。コンロ一つでは 間に合わず、どんどん空になったお銚子が 戻ってきました。  そのうち酔いが回ったのか、お銚子の 回転も鈍ってきました。艦内でも今頃は、 下士官が盛大に盛り上がっているだろうと、 想像できました。ここにいる士官連中も だいぶご機嫌のようでした。  時々爆笑が起き、それまで従兵は室内に 入れなかったので、小淵氏は、腹ばいになり、 障子に穴から中の様子をうかがいました。 すると、艦長が、「おい、あんな所から、 覗いているぞ。」と指差しながら大笑い していました。  小淵氏は中に呼ばれ、お酌をして回る ことになりました。そして、艦長の話し声に耳を 傾けていた時、小淵氏は、海兵団に入団する 前夜に道に迷ったところを案内してくれたのが、 篠田艦長だと感じました。  サイパン島から帰ると、休暇の噂が流れて いましたが、それが許可されました。軍隊に 入って休暇ほど嬉しいものはありませんでした。 小淵氏は、関東地方出身なので、3泊4日の 休暇が与えられました。  乗組員は、4分の一ずつ休暇となり、 小淵氏は二番目の組でした。東京いる 姉二人と帰省しようと考え、横須賀まで 来るように手紙を書きましたが、班長が 検閲している時に、「一人で帰れないのか」と からかわれました。  居合わせた下士官からもからかわれたので、 手紙は破り捨て、一人で帰ることにしました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 横須賀へ帰還 [巡洋艦大淀]

 物資の半分ほど陸揚げされた時、内火艇が 降ろされ、及川少尉が乗っていきました。  近くの島まで、連絡に行くということでした。 常夏の太陽が、容赦なく照りつける中で、 陸揚げ作業は、休みなく続けられて いました。  日没頃、陸揚げ作業が終わり、内火艇も 帰ってきました。内火艇から、10袋ほどの 南京袋が降ろされ、お土産の砂糖だという ことでした。「出港用意」のラッパが鳴り響き、 艦は静かに動き出しました。  大淀は、無事輸送の大任を果たし、横須賀へ 帰還することになりました。すでに陽は落ち、 東方から夕闇が迫ってきました。その中を、 先程飛び立った一式陸攻が赤と青の翼灯を 点滅させながら、帰投してきました。  やがて、大淀は、高速航行に入りました。 黒々とした影となって、サイパン島が後方へと 遠ざかっていきました。翌日も、夜翌日も、 帰路は無事な航海が続きました。  艦内には、再び暖房が入りました。この日の 夕刻、「サイパン島が大空襲を受けた。」という 不吉な噂が広がりました。無電で傍受したようで、 このような情報は、すぐに艦内に広まって いきました。  雪に降りしきる横須賀を出港してから1週間目、 大淀は、再び母港の横須賀に帰還しました。 今回は桟橋への横付けが許可されました。  その夜は、下士官は居住区で帰還祝いの 酒宴が許可され、小淵氏ら従兵は、士官全員が 横須賀で帰還祝いするということで、その 準備に忙殺されました。  宴会場は、市内にあるかなり古い建物の 2階で、行動のような大広間でした。片隅に 20畳ほどの座敷が障子で仕切られている だけの何の飾り気もない部屋でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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