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巡洋艦大淀 戦場は非情 [巡洋艦大淀]

 ボートがあと150mくらいまで 近づいてきた時、「敵機来襲」が 通報されました。  「配置につけ」「対空戦闘」のラッパが 立て続けに鳴り渡りました。甲板上では、 ボート吊り上げが準備されていましたが、 ボートはかなり離れていました。  その時、一人の搭乗員が、舷側にたどり 着きました。ロープを投げ入れましたが、 「助かった」と一言残し、海中に沈んで しまいました。  引き上げるロープに手応えがありません でした。救助される前に、体力も気力も 尽き果ててしまったようでした。  甲板上の声援も途絶えた頃、やっと長官を 乗せたボートが舷側につきました。大淀の スクリューは、波をかき立て始めました。  そして、ボートを吊り上げるフックが かけられると同時に、艦は滑るように 動き出しました。  この時、二人の搭乗員が泳ぎ着きました。 すぐにロープが投げ入れられましたが、それも 届かず、スクリューの波にかき消されてしまい ました。戦場は非情でした。  小淵氏らは、満身の力を込めて、ボートが つないであるロープを引きました。甲板上に 吊り上げられたボートから、小沢中将が、 沈痛な面持ちで現れ、身をこごめるようにして、 艦内に消えていきました。  長官に同行した幕僚は、10名くらいで、 その人達が降りるのももどかしく、ボートを 固定した小淵氏らは、一斉に各自の 戦闘配置に走りました。  主砲発令所はすっかり準備が整っており、 小淵氏の配置である射撃盤は、上水が 追尾していました。  早速交代して席につきました。それから間もなく して、「砲撃はじめ」が下命されました。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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巡洋艦大淀 無情 [巡洋艦大淀]

 搭乗員の救助を待っていたボートに、 大淀副長が、たまりかねて、「そんな事に かまわないで、長官を迎えにいけ。」と メガホンで怒鳴りました。しかし、ボートには 聞こえていないようでした。  メガホンを持った兵曹が、副長に替わり、 「急いで長官を迎えにいけ。そんな所で グズグズしていないで、はやく長官を 迎えに行くんだ。急いで行け。」と 怒鳴りました。  二番目の搭乗員は、6mくらいでボートに つきそうでしたが、再び漕ぎ始め、離れて いきました。艇に敷いてあるスノコ板などが、 投げ入れられました。その後、浮きそうな ものを、手当り次第に投げ込んでいました。  小淵氏は、この光景に一瞬無情を感じ ましたが、ボートを降ろした目的からすれば、 副長の叱責は当然と言えました。そこで、 小淵氏らは、大淀に泳いでくるように、 大声で呼びかけました。  しかし、大淀まで300mほどありそうな ためか、大淀に向かってきたのは一人 だけで、その他は、ボート目掛けて、 夢中で泳いでいるようで、小淵氏らの 声に気づいていないようでした。  兵曹が再びメガホンを持って、泳いでいる 搭乗員に、「本艦に泳いでこい。急いで こっちにこい。」と怒鳴りました。  搭乗員たちは、大淀に向けて泳ぎ 出しましたが、遅々としてして いました。  大淀のボートは、長官を乗せて、 大淀に向かっていました。ボートと 搭乗員、どちらが先に大淀に着くか という状況でした。  小淵氏らは、どちらもはやく 着いてくれと、見守るばかり でした。 紹介書籍:“巡洋艦「大淀」16歳の海戦 少年水兵の太平洋戦争” 著者: 小淵 守男
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