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山口多聞 第一次攻撃隊オアフ島を目指して [山口多聞]

 第一次攻撃隊は、旗艦赤城から飛び立った
総指揮官の淵田美津雄中佐を先頭に、一路
オアフ島を目指していました。

 発艦してまもなく、薄暗かった雲の上に、
光源が生れました。東から顔をだした朝日が、
雲上を黄金色に染めていました。風防ガラスが
光を浴びて、輝き出しました。

 淵田中佐は、厳粛な面持ちで、太陽を
見やりました。この日の出が見納めに
なるかもしれない。

 アメリカ軍が、日本軍の作戦をすべて
掌握し、臨戦態勢で待っていることも
ありえました。罠に向かって飛んでいる
かもしれませんでした。

 すでに、日は水平線より高く昇っていましたが、
雲が多い日でした。ときおり、雲間から射す
眩しい光が、旭日旗のように広がりました。

 淵田中佐の右側には、赤城飛行隊長の
村田重治少佐率いる雷撃隊40機、左側には、
翔鶴飛行長の高橋赫一少佐率いる急降下爆撃隊
51機の編隊が、それぞれ500mほど離れて、飛行を
続けていました。

 制空戦闘隊の零戦43機は、これら3つの大編隊の
500mほど上空を飛び、敵戦闘機隊が現れないか
どうか、眼を凝らしていました。

 総指揮官機は、偵察担当の淵田中佐を挟み、
前の席に操縦士が、後ろの席には電信員の
3人が搭乗していました。水平爆撃の時は、
真ん中の乗員が、爆撃照準手となります。
雷撃機は、操縦士が、雷撃手を兼ねて
いました。

 速度計は、230kmを指していました。気流の
乱れにより、機体が煽られ、翼が揺れました。
雲はすぐ真下にあり、波の上を走っている
ように感じました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 第二次攻撃隊 [山口多聞]

 第二次攻撃隊の準備のため、昇降機の音が
響きました。格納庫にあった艦上機が飛行甲板に
揚げられ、所定の位置へ運ばれました。

 第二次攻撃隊は、瑞鶴の嶋崎重和少佐を
指揮官に、水平爆撃隊54機、急降下爆撃隊
78機、零戦隊35機の、合計167機でした。

 水平爆撃隊は、800キロ爆弾を搭載し、
主として航空基地の粉砕を目的にして
いました。

 急降下爆撃隊は、250キロ通常爆弾により、
戦艦や巡洋艦を攻撃する手筈になっていました。
第一次とは違い、雷撃機はいませんでした。
第二次は、敵も防御を固めているので、低空で
突っ込むのは自殺行為でした。

 午前2時半までに、第二次攻撃隊の準備が
整いました。第二次攻撃隊には、蒼龍から、
「艦爆の神様」の異名を持つ江草隆繁少佐が、
急降下爆撃隊の指揮官として参加します。

 艦橋から降りていた山口少将は、江草少佐と
固い握手を交わしました。そして、蒼龍の
零戦隊を率いる飯田房太大尉の手を握り
締めました。

 そして、「第二次攻撃は、激しい対空砲火が
待っているだろうが、必ず帰還を果たせ。」と
激励しました。

 「人事を尽くして天命を待ちます。」という
返答に、「決して死を急がぬようにな。」と言って
手を離すと、飯田大尉は、力強く敬礼し、
「搭乗」と掛け声をかけ、搭乗員は愛機に
駆け寄り、乗り込みました。

 午前2時45分、第二次攻撃隊が出撃し、
南の空に向かいました。機動部隊は、
オアフ島北370キロ地点に達して
いました。

 山口少将は、攻撃隊を見送るなり、すぐに
羅針艦橋甲板に入りました。この時点では、
第一次攻撃隊からの無線は入っていません
でした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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