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山口多聞 攻撃機帰還 [山口多聞]

 風が強く、空母を大きく揺れていました。
零戦は速度を落とし、翼をシ上下させながら、
必死に追いかけてくるように見えました。

 揺れる甲板の上に、ドシンと尻餅をつくように
着艦し、ヒヤッとする場面もありました。幸い、
海上に転落した機体はありませんでした。

 最後の零戦が後方から近づき、着艦しました。
疲労困憊している搭乗員の気持ちが、そのまま
機体にも現れていました。

 搭乗員が、艦橋に立つ山口少将や、柳本
艦長、幕僚のもとにやってきて敬礼しました。
どの顔も異様に目が輝いていました。極限
状態にいたので、無理もありませんでした。
徐々に、表情に赤みが指してきました。

 藤田中尉は、第三制空隊を代表して、
戦闘の状況をかいつまんで報告しました。
詳細については、戦闘詳報へと記載され
ました。

 そして、飯田大尉と、二番機の厚見
一飛曹が戦死したことを告げました。
藤田中尉は、泣きはらした顔で、しゃっくりを
上げるように話していました。

 山口少将は、「ご苦労。少し休め。反復
攻撃があるかもしれん。」と、あえて厳しい
口調で告げました。

 山口少将も、胸が張り裂けそうでした。
ついさっき、帰還せよと言って送り出した
分隊長は、もうこの世にいない。だが、
戦争だ。悲しむ前に、やるべき事が
ありました。

 参謀から、第二航空隊は、反復攻撃の準備
完了という報告が来ました。山口少将は、
艦橋に上がると、赤城に向けて発光信号を
送らせました。内容は、「準備完了」という
もので、第二次攻撃の意見具申は
しませんでした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 空母の着艦用の設備 [山口多聞]

 艦上機が着艦すると、端にあるポケットに
待機していた整備員が飛び出し、すぐさま
フックを外しました。

 機体が艦首に向けてゆっくりと滑走すると、
制動装置が働いて、滑走制止装置が立ち、
制動索がすぐに元の高さで、一斉に張られ
ました。

 蒼龍や飛龍には、呉海軍工廠で完成した
電磁式制動装置が採用されており、これ
以降の空母には、油圧を利用した新型の
制動装置が実用化されました。

 制動索に引っかからなかった航空機は、
昇降機の前にある滑走制止装置で受けとめ
られました。これらの装置により、30~40秒
間隔で、着艦が可能となりました。

 蒼龍と飛龍は、厚さ45mmの木甲板で
作られており、露出した鉄甲板部分には、
亜鉛めっきが施されていました(ミッドウェー
海戦後は、木は撤廃され、甲板の装甲が
強化されました)。

 着艦してきた艦上機の大半は、被弾して
いました。急所をやられていないために
帰還できましたが、中には、良くこれだけ
穴だらけで飛んでこられたものだという
機体もありました。

 無事に着艦を終えた零戦は、昇降機に
よって格納庫に降ろされ、修理、整備され、
兵装が行われました。各空母の艦内は、
上を下への大騒ぎとなっていました。

 山口少将は、第二航空隊の将兵に対して、
第三次攻撃があることを前提に、準備を
急がせていました。

 第一次攻撃隊から帰還した艦上攻撃機と
零戦は、準備を整えていました。第二次
攻撃隊を収容すれば、いつでも甲板に
上げられました。

 搭乗員の士気は高く、後は、司令部の
英断待ちでした。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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