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山口多聞 飯田大尉戦死 [山口多聞]

 自分の機体から燃料が漏れているのを
発見した飯田大尉は、引火爆発しなかった
のが不思議なくらいだと改めて思いました。

 その時、2番機も同様に、燃料漏れで白筋を
引いているのを発見しました。これを見た飯田
大尉は、顔面蒼白となりました。母艦までは、
300km前後の距離があります。

 飯田大尉は、「被弾などで、母艦に
帰れない時は、最も効果的な目標を選び、
自爆すること。捕虜にはなるな。」と話して
いました。自分が、その状態に追い込まれる
ことは、想定していませんでした。

 飯田大尉は、意を決し翼を上下に振りました。
他の隊員は、飯田機の燃料漏れを知っても
どうすることもできませんでした。飯田大尉は、
速度を上げて、後続帰途の距離を保つと、
操縦桿を左に傾け、急反転しました。

 通り過ぎる列機の隊員が、風防をあけて、
敬礼で見送りました。飯田大尉は、黒煙に
向けて高度を下げると、カネオヘ基地の
兵器庫か格納庫と思える建物に、
突っ込んでいきました。

 飯田大尉の乗る機体は、屋根を超えて、
士官宿舎のアスファルト道路に激突し、
機体は四散しました。

 二番機の厚見一日飛曹も、飯田大尉を
追って、カネオヘ基地に突入しましたが、
湾内に落ち海中に没しました。

 飯田隊長を失った蒼龍隊は、藤田中尉が
先頭に立ち、指揮をとりました。藤田中尉が、
筑波で訓練中、飯田大尉は、分隊長という
間柄でした。

 飛龍隊は、蒼龍隊に続いてきました。途中、
P36の編隊と遭遇しましたが、機体の性能も
操縦技術も上回る零戦が、あっという間に
撃退しました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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山口多聞 カネオヘ飛行場壊滅 [山口多聞]

 敵基地内の高角砲や、機銃座には、射撃手が
ついて、ありったけの弾丸を放っていました。
幾条もの曳航弾の光跡が糸状に飛んで
いきました。

 飯田大尉は、基地の格納庫に向けて、
スロットルレバーについた機銃の引き金を
握りました。両翼についた20mm弾が唸り、
弾丸が屋根を粉々に破壊していきました。

 格納庫の下にある航空機もかなりの被害が
出ているはずでした。飯田大尉は、まだ、炎上
していない戦闘機を見つけ、射爆照準器を
睨み、機銃の引き金を引きました。

 敵機は、燃料タンクを撃ち抜かれ、大爆発
して紅蓮のキノコ雲をあげました。飯田大尉は、
戦闘機の棺桶ほどの広さしかない操縦席で
不思議な気分を味わっていました。

 蒼龍を飛び立った時は、武者震いして
いましたが、今は止まり、無心でスロットル
レバーを握り、下界から乱射される弾幕を
避けて、基地を攻撃していました。

 第二次攻撃隊は、午前5時15分に作戦を
終了し、機動部隊の待つ海域へ引き返し
ました。カネオヘ飛行場は、ほぼ壊滅状態に
なり、飯田大尉は、蒼龍の制空隊を率いて、
ベローズ飛行場を攻撃している飛龍の
制空隊のところに向かいました。

 飛龍の制空隊に合流し、基地を攻撃後、
攻撃中止を命じました。飛龍制空隊もならい、
引き返す合図を送って、蒼龍隊を追いかけ
ました。

 帰り道に、再びカネオヘ飛行場を通った
飯田大尉は、幾筋もの黒煙を上げているのを
確認しました。

 ここで、燃料計の残量がゼロに近づいている
ことに気づきました。風防をあけて確認すると、
燃料が白い尾を引いて流れていました。


紹介書籍:山口多聞 空母「飛龍」と運命を共にした不屈の名指揮官
著者:松田 十刻(まつだ じゅっこく)
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